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2019.12.22

たべる

神じゃなく「ぎんの雫」!? 日本酒酵母から生まれた世界初のワインの魅力

PUNK日本酒●「俺たちが飲みたい日本酒は違うんだよね」と名乗りを上げた若手醸造家たち。不要なルールは無視して、とにかく美味いこと最優先。その結果、日本酒の世界はここ10年で格段に進化した。そんな造り手たちが放つPUNKな日本酒をレコメンド。
日本酒をルーツに持つ、世界的にも画期的なワインが誕生した。ワインではあるけど、PUNKな日本酒スピリットを持つという意味で番外編的に紹介したい。
それが日本酒酵母から造られた世界初の白ワイン、「ぎんの雫」である。日本酒酵母を使ったことでアロマがことさらに輝き、フレンチなどの洋食はもちろん、合わせることが難しいとされる刺し身や寿司を始め、和食との相性も抜群にいいと評判だ。
「ぎんの雫」ソーヴィニョン・ブラン(左)とシャルドネ(右) 各3500円[希望小売価格]/ワインショップソムリエ 03-5413-3213
仕掛け人はボルドー五大シャトーの「ムートン」やアメリカ「オーパス・ワン」、チリのプレミアムワイン「アルマヴィーヴァ」を生み出してきたフランスのカリスマ醸造家、パスカル・マーティ氏。「ぎんの雫」は、彼が約7年の歳月をかけてチリで完成させた革命的な白ワインだが、その道程は前途多難だった。
この秋に登場したばかりで、解禁されたのはまだ日本だけ。すでに飲んだという人はあまり多くないと思うが、その“稀少性”を理解すれば、さっそく試さずにはいられないはずだ。
 

不可能を可能にした、日本酒をルーツに持つワイン

「10度以下の低温発酵でワインが造れないだろうか……」。
30年以上前、ボルドー大学で醸造を学んでいた学生のマーティ氏はある空想を抱いていた。それは「12度」が下限だと言われていた発酵温度より、さらに低い温度でワインの醸造ができないかということである。
香り成分が700個もあると言われる白ワインは特にだが、香り(=アロマ)はワインの魅力を大きく左右する重要な要素だ。酵母の発酵温度が高いほどアロマは揮発しやすい。そのため、できるだけ低い温度で醸造されるワインだが、使用される酵母はそもそも低温に不向き。発酵温度は12度が限度、というのが今なおワイン界の大原則であり、マーティ氏もそう教わってきた。

その定説に習ってワインを造り続け、醸造家として数々の輝かしい経歴を手に入れていったマーティ氏だが、頭の片鱗にはいつも12度を切る画期的な白ワインを造りたいというアイデアがあった。そしてその思いが現実化する糸口をここ日本でつかむことになる。
日本酒はワインと比べて低い温度で醸造される。通常は6〜15度の間だが、大吟醸や生酒のなかには、発酵温度5度を切るものもあるという。5度といえばワインのそれよりも半分以下の超低温だが、アルコール度数はしっかり保たれ、なによりもワインでは表現できない複雑なアロマを楽しむことができる。
自身のワインを多く輸出している日本を定期的に訪れていたマーティ氏は2010年、低音で発酵した日本酒のなかにさまざまなアロマがあることを発見。この運命的な出会いを経て、日本酒の製造プロセスを理解し、かつて漠然と思い描いていた「低温発酵ワイン」の製造への足がかりを得て、ついに今年、完成させたのだ。


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