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2019.12.28

時計

時計の歴史を変えたブルガリ「オクト フィニッシモ」は超コスパ時計である

時器放談●マスターピースとされる名作時計の数々。そこから6本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。「ラグジュアリーブランド編」となる今回の3本目は、ブルガリの「オクト フィニッシモ」。
安藤 思い起こせば、あれ、いつでしたっけ? 一緒にローマまで行きましたよね。「ブルガリ オクト」の発表会。
広田 行きました、行きました。ワールドプレミアですよね。2012年だったと思います。
安藤夏樹(写真左)●1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリーマガジンの編集長を経て、現在はフリーに。「SIHH」や「バーゼルワールド」を毎年取材し、常に自分の買うべき時計を探す。口癖は「散財王に俺はなる!」。
安藤 2012年かぁ、お互いあの頃はまだまだフレッシュでしたよね(笑)。ブルガリが満を持して新作のメンズウォッチを出す、ということで、かなり気合が入った発表会でした。日本からも何人かのジャーナリストに声がかかって、まずはスイスの工房を取材して。
広田 その後、40度を超える灼熱のローマへ(笑)。
広田雅将●1974年、大阪府生まれ。腕時計専門誌「クロノス」編集長。腕時計ブランドや専門店で講演会なども行う業界のご意見番である。その知識の豊富さから、付いたあだ名は「ハカセ」。
安藤 ローマで大々的にドカーンと発表するから、それまでいっさい秘密、とか言われてたのに、スイスの工房に行ったら、そこで働いているおじさんが、もうオクトしてたんですよね(笑)。「これが発表されるんだ!」ってみんなわかっちゃったけど、見てないふりして(笑)。ブルガリに関して言うと、「オクト」発表前と発表後で、かなり空気が変わりましたよね。
広田 はい。がらりと。
ブルガリにおける時計のイメージを一変させた初代「オクト」。ジェラルド・ジェンタの八角形デザインを踏襲しつつ、新たな魅力を備えている。

 
安藤 男性がビジネスでブルガリをするというのが普通のことになった。ひとつの新作でこれほどまで空気が変わるのを目の当たりにしたのは、前にも後にもオクトしかないかもしれません。
広田 オクト発表以前に、ブルガリはジェラルド・ジェンタの時計ブランドを買収し、垂直統合しています。オクトの八角形はジェンタを象徴するモチーフです。
安藤 ジェンタといえば、名作と呼ばれている時計を数多くデザインしている伝説的な時計デザイナーですよね。パテック フィリップの「ノーチラス」とか、オーデマ・ピゲの「ロイヤル オーク」とかも彼のデザイン。本人はすでに亡くなってしまったけれど、ジェラルド・ジェンタの名を冠した時計が今年ブルガリから発表されました。オクトはジェンタ自身のデザインではないんですが、その精神がしっかり生きている気がします。
広田 110の面で構成された複雑なケースは見事。

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最薄の記録保持者「オクト フィニッシモ」

ラグジュアリーブランドのスゴい時計【3】
ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック」
ブルガリ「オクト フィニッシモ オートマティック」
ケース厚わずか6.85mmの薄型自動巻きモデル。マットな表情も男好み。「オクト フィニッシモ オートマティック」。チタンケース、40mm径、自動巻き。152万2000円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン 03-6362-0100)
安藤 で、初代オクトも十分素晴らしかったんですが、超薄型の「オクト フィニッシモ」が出てきたときの衝撃ってのが、さらにすごかった。僕なんかは正直ちびりましたね。
広田 めちゃくちゃすごい!って、僕も思った。
安藤 腕時計のデカ厚ブームが終焉を迎え、時計専業ブランドが世界最薄競争を始めたとき、時計専業じゃないブルガリが、突然そのトップ争いの中心に躍り出るという……。
広田 薄い時計はそれだけでも使いやすいんですが、オクト フィニッシモは薄さ以上の着け心地を追求してるんですよね。たとえば、このバックルちゃん。装着時、ブレスレットとバックルが完全にフラットになるから、着けていてストレスがないんです。
安藤 バックルの裏も表もブレスレットからのバックルの出っ張りが見事にないですもんね。

広田 そう。多くのブランドがブレスレットを専門メーカーに外注するなか、ブルガリって基本的に、ケースもブレスレットも自社製なんですよ。だから、こういうほかにない設計ができちゃうんです。完全に納得できるところまでやり切って、イエーイっていう仕上がりを得た。すごくアリな時計。
安藤 モダンなデザインも魅力ですよね。薄型時計って割と普通のデザインのが多いから。オールチタンで、グレーと黒のツートーンカラーってのがまた良い。で、ここから快進撃が始まる。2014年に手巻きトゥールビヨン、2016年にミニッツリピーター、2017年に三針自動巻き、2018年に自動巻きトゥールビヨンで、当時の最薄ワールドレコードを樹立していきました。
広田 ブルガリの薄型時計の技術って付け焼き刃じゃなくって、ちゃんとした技術の裏付けがあるんです。ブルガリはジェラルド・ジェンタと有名時計師ダニエル・ロートが共同で作った工場を買収して自社統合してるんです。この工場、もともとミニッツリピーターとかグランソヌリといった超複雑時計の製造が得意だったんですよ。こういう時計は部品点数が1200個とかになるから、必然的にそれを薄く組み上げる設計と技術が必要になる。そうしたノウハウが蓄積されていたんですよね。
安藤 いきなり出てきてワールドレコードをバンバン出してると思われがちだけど、実はそこには理由があるんだぞ、と。
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