時器放談●マスターピースとされる名作時計の数々。そこから6本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。「ラグジュアリーブランド編」となる今回の1本目は、シャネル「J12」。
安藤 今回は、時計専業以外の、いわゆるラグジュアリーブランドの時計について広田さんといろいろお話できたらと思っています。「時計専業以外の」とあえて言ってますが、僕的には正直、作っている時計の水準は、もう時計専業ブランドとほとんど遜色ないと思っているんですが。
広田 はい。ブランドによっては、技術力はかなり高いです。そこにラグジュアリーブランドらしい味付けをしているので、魅力的なモデルも多いと思います。
安藤 じゃあ早速、シャネルから参りましょうか。シャネルというと個人的に大好きな「ムッシュー ドゥ シャネル」という名作もありますが、まずはなんといっても「J12」ですかね。20周年を目前にした今年、大リニューアルを果たしました。
ラグジュアリーブランドのスゴい時計【1】シャネル「J12」
広田 もともとJ12という時計はとてもよく出来た時計なんです。セラミックス製のケースとブレスレットがあまりに印象的なので、「派手な時計」と思う人もいるかもしれませんが、デザインとしては超王道。奇抜な要素がまるでない。実はすごくバランスがいい時計なんです。時計の厚さとブレスレットの厚さが適切なので、着用時に腕を振ってもグラグラしない。すごくよく考えられている。
安藤 デザインとしての超王道って、例えばどんなところですか?
広田 時針、分針、秒針のバランスとか。それぞれが指し示すべき部分に絶妙にあった長さなので、とにかく視認性が良いんです。
安藤 なるほど、時計としての「お約束」をちゃんと守っている、と。
広田 そう。実はこれって時計専業じゃないブランドだから出来たんじゃないかと思ったりもします。
安藤 どういうことですか?
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