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時計専業ブランドではできない時計作り

広田 時計専業メーカーの場合、たくさんのモデルを製造しているじゃないですか。すると全部が全部、個別のパーツを用意できない場合もある。例えば、針とかって、いくつかのモデルで共有して使われたりもします。で、文字盤のデザインによっては、針が微妙に長すぎたり短すぎたりってことになったりするわけです。その点、ラグジュアリーブランドの時計はモデル数が少ないこともあって、それぞれに専用のパーツを製造してるから間違いがない。シャネルの場合は真面目だから、とくにそういう点は抜かりないわけです。
安藤 なるほどー! そんなふうに細部まできちっと詰められているから、レディスのイメージが強いシャネルにあって、J12は男性にも高く評価されているのかもしれませんね。
広田 ですです。
安藤 今でこそ腕時計の素材として欠かせなくなったセラミックスですが、ここまで一般化させた立役者はシャネルなんじゃないかと思うんですけど。

広田 そうそう。それ以前にもセラミックスを使った時計自体は存在してるんですけどね。業界にとってはJ12のスマッシュヒットが大きかった。セラミックスって、あんまり角が立ちすぎたりすると、落としたときに割れたり欠けたりするわけです。だから微妙に角を殺さないといけないんですが、シャネルはそういう部分の処理がうまい。シャツの袖も傷めないし、仮に落としたとしても角が丸いからそう簡単に欠けたりはしないし。
安藤 ブレスレットまでセラミックスで作るのって、それこそすごい精度が求められますもんね。J12はデザイン的な妥協をまったく感じさせないレベルにまで完成度を高めている。この時計の出現によって、セラミックスという素材が一気にラグジュアリーな存在へと高められた印象があります。
広田 シャネルって実に真面目なブランドなんですよね。今の時計にもそれが如実に現れている。正直言うと、J12以前のシャネルの時計って、あまり評価してなかったんです。少なくとも男性がするには物足りなかった。でも、J12の登場でガラリと変わりました。根底にある真面目さが腕時計にもしっかり反映された気がします。そして、今年のリニューアルでJ12はさらに良くなりました。


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