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2019.11.02

ファッション

ヴィンテージデニムの洗濯はアリ? ナシ? 第一人者が導いた結論

オーシャンズが11月2日(土)に開催するデニムイベント「OCEANS DENIM CAMP(オーシャンズ デニム キャンプ 2019)」。“年に一度はデニムをはきかえよう”をスローガンに掲げたイベントまで、デニムにまつわるスペシャルコンテンツをお届けします!
やって手に入れた理想の色落ちのヴィンテージや稀少性の高いデッドストック。これらとジックリ付き合うにあたって、「洗濯」をどうすべきか。洗っていい? ダメ? 古着屋「ベルベルジン」のデニムアドバイザー藤原裕さんに、自身の経験から辿り着いた“藤原流”の洗濯方法を聞いてみた。
第1回:「ヴィンテージデニムの値段の推移と景気の関係」を読む。
第2回:「世界でいちばん高価なヴィンテージデニムの話」を読む。
第3回:「ハンターはデニムを掘り当てに鉱山を目指す」を読む。
第4回:「ヴィンテージデニムの価値を見出した日本人の正体」を読む。
第5回:「ヴィンテージデニムとトレンドの深い関係 」を読む。

藤原 裕(ふじはらゆたか)●1977年、高知県生まれ。原宿の人気古着ショップ「ベルベルジン」のディレクターを務める。豊富なヴィンテージの知識をベースに、ヴィンテージデニムアドバイザーとして、他ブランドとのコラボなども行う。 2015年3月にリーバイスの501XXの歴史と51本のヴィンテージジーンズの写真や資料を収録した書籍『THE 501 XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』を上梓。
──そもそも洗っちゃダメとか、洗うなら裏返してとか、デニムの洗濯にはさまざまな“正論”が飛び交いますが、なぜこんなに見解が分かれるんでしょうね?
藤原 何を重点に置くか、によって意見は分かれますよね。たとえば裏返して洗うと「縫製糸がプチプチ切れるからダメ!」というリペア関係者の意見もあります。
デニムをはいているとホコリや汚れが外側に付着するし、裏側からは皮脂汚れが付着するじゃないですか。どちらを重点的に落としたいか? となったとき、僕の場合は皮脂汚れなんです。極力インディゴの色を落としたくないので、直接表面を揉んだり擦れたり、という状態を避ける意味もあって、裏返して洗う派です。
──藤原さんの言う“洗い”というのは洗濯機ですか?
藤原 最善策は手洗いです。大きめの容器を用意して水(またはぬるま湯)を張ります。一人住まいならバスタブが便利ですが、家族がいるとそれはそれでね(笑)。いちばん使えるのがベビーバス。お子様が成長して使わなくなったものがあればベストです。
洗剤は、僕も開発に携わった植物由来のデニム専用洗剤「BEYONDEXX」*1 をお薦めします。約20分の浸け置きだけで、皮脂汚れを分解してしっかり汚れを落としつつ、インディゴの色には極力影響を与えずに除菌もできるスグレモノ。もちろんベルベルジンで販売しています!
*1 デニム好きのために研究開発された洗濯洗剤。プッシュ式となっており、水30ℓに対して5プッシュでデニム1本、45ℓに対して10プッシュで2本が目安。
「BEYONDEXX」300ml 3900円/ベルベルジン 03-3401-4666
──その洗濯理論に辿り着くまでには失敗もたくさんありました?
藤原 そりゃもう(笑)。大昔ですが、デッドストックからはき込んだ革パッチ付きXX(ダブルエックス)*2 をはいて飲み屋へ行ったんです。で、レッドアイでしたっけ? ビールとトマトジュースを割ったカクテルを同席の後輩がトイレに立ったときにベチャーッ!とこぼしまして。
さすがに洗わないとマズいと自宅に帰ってお湯でそ~っと洗ったら、みるみるうちにインディゴの色が抜けて、乾くと変な色落ちになってしまいました。飲み代で10万円くらい使って、自分のジーンズの価値も10万円くらいダウンしてしまったという最悪の事態でした(涙)。
*2 1886年~1957年まで501XXの右腰に取り付けられるラベルは革製。洗濯などで著しく縮んだり破損、移染することから、1957年以降は防水性に優れた紙製に変更される。ゆえに革パッチが残った状態のXXは希少とされている。
──……(絶句)。ちなみに、普通にはいている状態だとどのくらいのペースで洗濯しますか?
藤原 汗をかきやすいとか、体臭が気になるとかの個人差、それから季節によっても洗濯の回数は変動しますが、ユーズドは10回はくごとに1回、夏は汗を多くかくので5回に1回は洗濯するようにしています。乾燥はやはり風通しのいい日陰での陰干しがおすすめです。
──ではデッドストックからはき始める場合はどうでしょう?
藤原 ここに僕が自分の40歳の誕生日を機に、デッドストックからはき始めた1974年製の501XXがあるんですが、最初に「BEYONDEXX」で手洗いして縮ませて*3 再度手作業で糊付け*4 したあとは“色づくり”のために、1年7カ月洗わずにはき続けました。こうすることでヒゲやハチノス*5 が出る部分だけ色落ちが進むんですよ。その色づくりのベースができたらユーズドと同じ頻度で定期的に洗っています。色づくり期間の1年7カ月は、娘も抱っこしないようにしてましたよ(笑)。
*3 リーバイス501XXは、洗って生地が縮むことでフィット感を高める“シュリンク・トゥ・フィット”が採用されている。そのため未洗いのままはき始めてしまうと、色落ちの位置が洗って縮んだあととズレてしまう。
*4 再度糊付けをすることで皺の形状が定着し、その部分がはき込みによって多く擦れることで濃紺と色落ち部分のコントラストがハッキリ出る。ベルベルベルジンでは洗濯後の糊付け(手作業)のサービス(1本3990円)も行っている。
*5 股関節から太腿に掛けて広がる、はき込み皺の色落ちを“ヒゲ”、同様に膝裏に現れるハニカム状の色落ちを“ハチノス”と呼ぶ。

──デッドストックから色を「育てる」なら糊付けに加え、一定期間洗わないっていうのがコツなんですね。
藤原 とはいえ、洗わないリスクも知っておかないといけません。洗わないと臭いだけでなくヒザやポケット周辺など、生地がところどころ伸ばされて薄くなり、破れやすくなるというデメリットもあるんです。これも部分的に破れていますが、本来は水通しをすることで繊維間の汚れが取れ、生地がぎゅっと収縮することで強度を保つわけですから、ケアという意味では定期的な洗濯が大事だということも覚えておきたいところです。
──革パッチのケアはどうしたらいいでしょう。オイルを塗るとか?
藤原 オイルを入れると変色してしまうので、おすすめしません。究極ははかないのがいちばんですが、パッチの刻印などを残すために僕はバンダナを被せて、その上からパッチの大きさに合わせて折った段ボールで挟み、透明テープで留めてからさらにタオルを巻いてパッチが濡れないギリギリのところまで洗います。
 
場数を踏み、自らが実験台になっているだけあって藤原さんの洗濯術には説得力がある。これならヴィンテージ初心者も心強い! 藤原さんの貴重なデニムトークは、本日開催中の「OCEANS DENIM CAMP(オーシャンズ デニム キャンプ 2019)」にて、16:50から。今からでも間に合う人は会場へGO!
インスタライブもあるので、オーシャンズのインスタグラムをチェック!
 
志賀シュンスケ=写真 實川治德=取材・文


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