この画期的なエスプレッソマシン、電気を使わないこと以外にもメリットは多く、「オートマチックのエスプレッソマシンだと圧力は一定なんだ。だけど僕のは手回しだから自分で調整できる。落とし始めはゆっくりと、そして終盤は素早くハンドルを回して圧力を高めて香りを引き立てる、なんて楽しみもあるんだ」とマイコンさん。
淹れてもらった一杯はいつも飲むエスプレッソよりクレマがしっかり立ち、シャープな苦味と爽やかでいてバランスのとれた酸味が美味。
そんなブラジルらしい一杯を飲みながらマイコンさんは続ける。
「故郷ブラジルのミナスジュライスはコーヒー豆の産地としてとても有名で、小さい頃から美味しいコーヒーは身の回りにあったんだ。でも、ただ単に美味しいコーヒーが飲みたいからこれをデザイン開発したわけじゃないんだよ」。
って、どういうこと?
「木工職人とか金属加工職人で腕の立つ仲間が身の回りにたくさんいるんだけど、仕事がなかなかなくて。エスプレッソメーカーを作ることで、コーヒーだけじゃなく彼らの仕事も産み出せたらと思って。僕はもともとはプロダクトデザイナーだからね。故郷につくった産業で、世界のみんなのハッピーが作れたら、それこそ最高だよ」。
そして、スマホの中の写真を見せながらいたずらっぽく言って微笑む。
「原宿からは想像もできないくらい田舎でしょ? だから、たとえ電気が来なくなっても、これさえあれば美味しいエスプレッソでホッとひと息つける。こういう環境で飲む一杯は、僕の人生で最高の宝物さ」。
ということで、そろそろ本記事のタイトルの答えを出すとしよう。マイコンさんのエスプレッソマシンには、機械には出せない温もりがある。そこには、勝ち負けなんかで計れない価値がある。
日本への本格上陸を、首を長くして待とうじゃないか。
【取材協力】デウス エクス マキナ 原宿東京都渋谷区神宮前3-29-5http://deuscustoms.com/