>連載「いま乗りたい、俺たちのチャリ」をはじめから読むクルマやバイクに比べたって自由度に引けを取らないチャリのカスタム。それはeバイクと称され、ここ最近人気の電動自転車でも然り。ならばプロが本気でカスタムを施すとどんな出来映えになるのか!?
腕を振るってくれたのが、東横線・学芸大学駅近くにあるテンプラサイクル。ピストバイクからオリジナルアパレルまで取り扱い、カスタムの相談にも乗ってくれる頼もしいショップだ。
一児の父でもあるオーナー・小林健太さん(45歳)がカスタムベースにセレクトしたのが、パナソニックの「EZ」。ドッシリと低く構えたBMXクルーザータイプで、買い物や子供の送り迎えまで使える汎用性が人気の一台だ。
「ぼくにも子供がいるので、機能性は損なわずに乗っても恥ずかしくないように、というオーダーが多い理由はよくわかります。安全性を担保しつつ、幼稚園に行ったときにほかと差を付けられるものを、という具合に。このEZはいじるベースとしては面白いんですよ。ちょうどいいタイミングで、『乗らないから持っていって』というお客さんがいたのでそれをカスタムしちゃいましょう!」。
ママチャリ感、電動バイク感を極力排除した圧巻のカスタム
というわけで仕上がったのは、バイクを彷彿とさせるワイルドな仕上がり。小さいころからミリタリー好きで、クルマやバイクも好きでいじってきたという小林さんのキャリアを色濃く反映した男っぷりのいい一台になった。
「コンセプトはミリタリーですが、裏テーマは“族車”で(笑)、日本的な雰囲気が感じられると思います。全体的に“電動バイクらしくない”雰囲気になるようにしました」。
フレームや機関部分などは道路交通法に従ってそのまま残しながら、“電動バイク”っぽい部分は隠す工夫をしている。スイッチ類は通常ハンドル上部に付くが、隠すためにフレームサイドに移設した。
一番のこだわりポイントはライト。バイク用のライトを大胆に移植。とはいえ内部の配線をいじり、肝心の光源は自転車用のものに変更。手間を惜しまずワンオフすれば、こんなに個性的になるのだ。
ドッシリとしたスタンドは、見た目のインパクトに加え使い勝手も両立している。駐車時にもバツグンの安定感だ。
ゴツいグリップは、なんとVANSのスニーカーラバー。BMXによく使われるもので、グリップの良さはいわずもがなだ。
ハンドルとフレームを繋ぐステムは、THOMSON(トムソン)製。航空機業界最大手2社の機体に使用される部品を任されるほどの高い信頼性と強度設計に基づいて作られる。こんなところまで強いこだわりが感じられる。
駆動部分のある後輪ホイールはそのままだが、前輪は大胆に変更。自転車やバイク製品としてMOMA美術館が唯一認めたモノと同デザインのホイールをチョイスしたとか。またサドルには競輪用やマニア向けとして定評のある、「KASHIMAX(カシマックス)」のハンドメイドモデルを採用。
メニューは多彩。カスタムは男性サイクリストの嗜み?
ライトのパーツ集めに苦労したというが、今回の作例はわずか2〜3日間で完成。テンプラサイクルでは「こうして欲しい」というリクエストを、そのままカスタムオーダーできるという。
「クルマからバイクまでいろいろやってきましたが、自転車カスタムの醍醐味は手軽で敷居が低いことですね。とはいえ、いじるのはたいてい男性ですが(笑)。ママチャリタイプなら、細いフレームにボリュームを持たせてゴツくしてあげたりとか、BMXのハンドルを付けたりとか。あとはライトも変えたり、かごをワインの箱に変えたりとか、いろいろできますよ」。
一昔前のいわゆる“ママチャリ”ではなく、ロードバイクやマウンテンバイクまで選択肢が豊富になったeバイクだが、やりように応じてここまで手を加えられることがおわかり頂けただろう。
どこをどういじるか……ちょっと想像しただけでも、なんだかワクワクしてこないだろうか?
[取材協力] テンプラサイクル 住所:東京都世田谷区下馬6−18−8 カドーロ学芸大1F 電話:03-6453-2655 営業:11:00〜20:00、11:00〜19:00(日曜・祝日) 水曜定休http://tempracycle.com/小島マサヒロ=写真 吉州正行=取材・文