連載「健康で文化的な、真夜中の白めし」
家族が寝静まり、日付が変わる頃。妻が炊いてくれたごはんが、仕事帰りのからだに沁みる。そんなささやかな幸せをさらに増幅させてくれるのが「白めしのおとも」。欲張りな男たちの欲望を刺激する、お取り寄せもできる逸品をどうぞ。
年明けからひと月半が過ぎ、“2019年”という年にも慣れてきた。けれど、仕事が回り始めたのも束の間、年度末が訪れる。ハードな日々がまたやってくるのだ。
こんなときこそ、夜食には身も心も温まるお茶漬をサラサラと食し、1日の疲れを流したい。赤坂松葉屋の「お茶漬」は、そんなオッサンの癒やしになる存在だ。
赤坂松葉屋は、昭和51年に松茸専門店として創業した本格料亭。松茸・飛騨牛をはじめとした四季折々の風情ある懐石料理が自慢だ。料亭の味を自宅で……とは、どこかで聞いたフレーズだが、まさに自宅で料亭の味を堪能できるというわけ。中でも、注目したいのが、ジュレを用いた「お茶漬」だ。
お茶漬の歴史を紐解くと、さまざまな進化を果たしてきたことがわかる。お茶漬界のレジェンド・永谷園のウェブページによれば、そのルーツは白めしに水やお湯をかけたもので、平安時代の文献で確認できるという。その後、お茶を用いるようになって“お茶漬”として成立し、江戸時代には一般庶民に広まり、具材を乗せる文化も根付いた。
そして、現在主流のいわゆる即席お茶漬へと続くわけだが、ここでも進化は止まらない。お馴染みの粉末タイプとして確立したのち、見た目にも麗しい最中(もなか)タイプが人気を博す。それに続くのが、今回紹介するジュレタイプなのである。
正直なところ、なぜジュレに? と思ったが、レンゲで口に運んでみると、なるほど!と膝を打った。というのも、粉末のお茶漬にはない本格的な出汁の旨みがジワリと口に広がるからだ。
さらにジュレの中に入った松茸も、乾燥松茸とは一味も二味も違うぷりぷりとした食感と風味を味わえる。専門店の逸品をこんなに手軽に堪能できるのは口福と言うしかあるまい。ジュレの機能性を甘く見ていたが、つまりはお店で食べるお茶漬に近い味になっているのである。
4食分で1300円弱とちょっぴり贅沢価格だが、これで1日を締めくくることができる幸福を考えれば、その価値は十分。忙しい年度末を走り抜けるため、試してみてはいかがだろうか?
赤坂松葉屋オンラインショップhttp://matsubaya.hs.shopserve.jp/きくちよしみ=撮影