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2019.01.12

「いずれ子供に譲りたい」妻を口説いて手にした同い年のトヨタ・ランクル60 

俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。

■2人目■
ロンハーマン PR 福本宏二さん(30歳)


1988年生まれ。「古着屋で大好きな服を漁る」学生時代を過ごしたのち、東京・恵比寿のアメカジの名店に勤務。その後現職へ。週末はサーフィンと釣り、ファミリーキャンプに勤しむアウトドアラバー。妻と息子、娘の4人暮らし。
http://ronherman.jp/

■福本さんの愛車■
トヨタ ランドクルーザー(’88年式)


高い耐久性と信頼性ゆえ、世界中にファンが多い大型クロスカントリー車。「ランクル」と略され、さらに世代別の型式で呼ばれることが多く、こちらは「ランクル60(ロクマル)」。製造は1980年から1990年だが、武骨なスタイルや本格的な4WD機能が、アウトドア志向の人々から今も根強く支持されている。


【写真15点】「妻を口説いて手にした同い年のトヨタ・ランクル60 」の詳細写真をチェック

妻が猛反対したストレスだらけの車

「本当に面倒くさい車なんですよ。4駆にするとき、いちいち車を降りてフロントのホイールをロックして……」というわりに、笑顔だ。

今時のSUVなら、福本さんが毎回やらなければならない作業はすべて自動でやってくれるというのに。
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しかし福本さんにとってその毎回の作業よりも大変だったのは、「妻を説得すること」だったと言う。
「大反対されました。というのも実は、2人目の子供が生まれたのを機に、古いジムニーから最新のミニバンへ乗り換えて、まだ1年しか経っていなかったんですよ」。

子供たちの教育費がこれからかかるというのに、なぜ古くて燃費の悪い車にして余計な出費を増やすのか、乗り心地も悪くなるし、せっかく買った車を1年しか乗らないなんてもったいない……etc. 妻の指摘は「すべてもっともです」と福本さんも認めている。

「ミニバンはとても快適でした。燃費も良かったし乗り心地も良く、使い勝手もいいし、なんのストレスもなかったんですよね。けれど、ストレスがなさすぎて、乗っていて全然気分がアガらなかった」。



気分のアガらない車にこのまま乗り続けるのか? そんな自問自答をしていたところに、昔からずっと欲しかった「ランクル60」が見つかってしまった。

そして上記の通り、妻の大反対。「結婚して初めて家族会議を設けました(笑)」。

憧れ続けていた白ボディ×ブラウン内装であること、好みの後期型の角目4灯であること、希少なハイルーフ仕様であること、自分の生まれた年と同じ年式であること、これだけ条件がそろった中古車はもう2度と出てこないこと……福本さんは人生最大のプレゼンを行った。

が、そうした福本さんのこだわりにほとんど耳を貸さず、妻はひと言「で、それはずっと乗り続けるの?」と聞いたそうだ。

もちろん「一生乗ります!」と即答。さらに「お金ができたら、妻専用の軽自動車も買います」と付け加えたという。



軽自動車の約束が功を奏したのかは定かではないが、こうして福本さんは今目の前で「“自分がこの車を動かしてる”っていう操作感がたまらない」と目を輝かせながら我々に説明している。
 

キャンプ、釣り、サーフィン……「ザ・アウトドア」を満喫したい

福本さんがここまでランクル60にこだわった理由は、趣味のアウトドア。昔から好きだったサーフィンに加え、キャンプや釣りにもハマり始めたのは、社会人になってから。「先輩たちに連れられてキャンプや釣りに行っているうちに、こういうライフスタイルってステキだなと気づいたんです」。



テントを張って焚き火の周りをみんなで囲み、お酒を飲みながら語り合う。焚き火がほんのりと照らすのは、自分たちと、テントと、ここまで乗せてきてくれたみんなの愛車たち。

「古いランクルもヴァナゴンも、クラシックレンジもディフェンダーも。すごくサマになると言うか、見た目も機能もアウトドアにはまりますよね」。

中でもランクル60は、福本さんにとって「ザ・アウトドアのイメージそのもの」だった。「ただ、社会人になってすぐは若くてお金もなかったから、中古のジムニーにしたんです。それも相当気に入っていたけれど、やっぱりずっとランクル60が一番だと思っていました」。

実は取材時は、ランクル60が納車されてまだ1カ月ほど。それでも既に千葉の山奥にある野池に、ハンドメイドの木製ルアーをもって釣りに出かけたそうだ。「釣りは本当に投げているだけで面白いです。そのときはなかなか釣れなかったですが、ランクルなら行き帰りも楽しいですしね」。

さらに友人家族とのキャンプも計画中。「キャンプにも前からよく仲間と行っていました。昼間は子供たちを遊ばせるだけ遊ばせて、疲れさせ、子供がぐっすり寝たあとで大人たちだけでお酒を飲んでという第2幕が始まって」。

そのとき、焚きの灯りにほんのり写し出される白いランクル60は、きっと福本さんの気分をもっとアゲてくれるだろう。
 

乗って思ったのは、「いつかは息子に渡したい」

愛車は福本さんと同い年となる’88年式。シフトレバーを操作する度にガチャガチャと音がする、高速を走るとうるさくて後部座席と会話ができない。

乗り心地はお世辞にも良いとは言えない……でも「自分でこの車を操作している! という感じがすごくします。それが自分にとって“車に乗る楽しさ”というか」と、子供のような笑顔で話す。



ランクル60のファンの中では丸目ライトの前期型が人気だ。けれど福本さんは「角目ライトのほうが格好良かったんですよね。天井の少し高いハイルーフ仕様で、白いボディにブラウン内装という組みあわせも、あまりないし」。というランクル60を語る言葉が止まらない。

変えたいのは前のオーナーが取り付けていたカーナビぐらいで「取り外して、ただの収納ボックスにしたい」とのこと。けれど、カスタマイズするのはせいぜいそれくらい。

逆に言えば、本当に探していた、夢に描いていた通りのランクル60が突然見つかって「しまった」のだ。



最初は大反対していた妻も、乗るうちに最近はだんだん好きになってきていると福本さん。

「妻に宣言した通り、一生乗り続けるつもりです。そして、もし将来子供が欲しいといったら、譲りたいと思ってます。こんなに楽しい車なら、“車に乗る楽しさ”をきっと感じてもらえると思うので」。どうやら本当に、これからの人生を一緒に走って行く1台に巡り会えたようだ。

こんなオトーチャンが運転するランクル60に揺られて育った子供たちは、きっと車好きになるに違いない。親にとっても子供にとっても価値あるものとして車を受け継ぐ。車も技術もどんどん進歩する今だからこそ、車とこんな付き合い方ができたら、幸せじゃないか。

ほかにも「俺のクルマと、アイツのクルマ」を見る
1人目:「VWのヴァナゴンが叶えた夢のカリフォルニアライフ」



鳥居健次郎=撮影 籠島康弘=取材・文

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