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2018.12.25

ライフ

フェアな関係を望み、選んだ「事実婚」。自分らしい”結婚”を実現した夫婦【前編】

十人十色の夫婦関係 Vol.8
夫婦のカタチは人それぞれ。その数だけ、異なる幸せがある。たとえ一般的なスタイルと一線を画すものであっても、当人たちが納得していればそれでいいのだ。当連載では、ステレオタイプな「理想の家族」の型にはまらず、独自のスタイルを持つ夫婦を取材。異色ながらも円満な結婚生活を通じ、多様な幸せの在り方を探る。
「十人十色の夫婦関係」をはじめから読む

今回お話を伺ったのは江口晋太朗さん(34)と高木萌子さん(34)夫婦。ふたりの苗字が異なるのは、法律上の婚姻関係にはないからだ。いわゆる、事実婚のカップルである。
今年1月、妊娠を機に“結婚”を決め、9月に事実婚の手続きをとった。なぜ、法律婚ではなく事実婚なのか? 事実婚を選んだふたりの、夫婦としてのありかたとは?
 

 すべての人を幸せにできない「法律婚」への抵抗感

ふたりの出会いは3年前。萌子さんにとって晋太朗さんは、当初から“気になる存在”だったと振り返る。
萌子さん「気になる、といっても恋愛対象としてタイプだったわけではなくて(笑)。当初は、考え方や物の見方がおもしろい人だなと思ったんです。彼の職業がジャーナリストということもあって、いろいろな物事に対して型にはまらない視点を持っているところが印象的でしたね。
結婚もそのひとつで、彼が今の法律婚の制度に違和感を抱いているということは、なんとなく聞いていました。ただ、その頃は自分が事実婚を選ぶことになるとは、全く考えていませんでしたね」。

それゆえ、晋太朗さんと交際に発展し、妊娠が分かったときも「普通の結婚」をするものと考えていたという。
萌子さん「彼から法律婚ではなく事実婚にしたいと告げられたとき…… 正直に言えば、あえてそっちを選ぶ必要はないんじゃないかと思いましたね。だって、普通に籍を入れるほうが簡単ですからね。それに、女性として、いわゆる『お嫁さん』に憧れる気持ちも多少はありましたから」。
「ただ、交際時から彼の考え方も聞いていたし、周囲にも事実婚の夫婦はいたので抵抗感もそれほどなかったんです。ですから、当初は賛成でも反対でもなく、子供に不利益が出ないのでれば、事実婚でもいいかなと。それくらいの感覚でした」。
晋太朗さんは決して、法律婚の夫婦を否定しているわけではない。ただ、現行の日本の結婚制度に問題意識を持っており、ジャーナリストという職業柄もあって自身がそれを選ぶことにはどうしても抵抗感があったようだ。

晋太朗さん「現状の結婚制度は必ずしもすべての人を法的に守り幸せにできるスキームにはなっていないと思います。象徴的なのが夫婦別姓の問題。制度上は夫婦どちらかの姓に統一することになっており、家制度の名残のなかで、いまだに女性が男性側の姓を選択するケースが9割以上。それまで持っていたアイデンティティが変化するなど、女性側に多くの対応を強いている状況といえます。これだけ女性の社会進出とか、男女平等をうたっているなか、結婚の制度そのものが男女不平等のままで、現代の価値観に必ずしもすべて合致しているとは言えない状況なんです」。
「また、LGBTの方々に対して最近ではパートナーシップ制度を認める動きがでてきていますが、これも法的に守られた「結婚」ではないため、法的な対応にも法律婚との違いがあったり、パートナー認証を受けるための手続きが難しかったりと不安もあります。法律は時代とともにアップデートしていかなければいけないはずなのに、未だに古いままで時代に追い付いていないのは大きな問題ではないかなと考えています」。


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