人のモノサシではなく、自分たちの価値観で、よりリアルに、格好よく。ファッションにおける「ストリート」の根幹にあるこんなマインドが、何かと小難しい(気がする)ワインの世界でも拡大中。それがナチュラルワインである。
しがらみ不要、無用なルールは御免蒙る。とびきり美味い一杯を追求するストリートマインド全開なナチュラルワインは、オーシャンズ世代にこそ相応しい!
ナチュラルワインは一般的なワインと比べて味のバリエーションが広く、いい意味で“変則的”である。よって、“赤には肉、白には魚”といったセオリーさえに通じない。
そこで我々は“ナチュラルワイン×料理”の底知れぬ可能性を探訪。前回は“
餃子×ナチュラルワイン”という意外なペアリングをお伝えしたが、第2弾となる今回は“ナチュラルワイン×お好み焼き”という、これまた珍しい組み合わせを紹介する。
訪れたのは南青山にあるワインバー「赤い部屋」。骨董通りを歩き、小さな看板を見つけたらビルの奥に進み、矢印の方向に向かって階段を下りる。
そして見えてきた扉の向こうが、我々に“発見”を与えてくれる「赤い部屋」。ここのスペシャリテは「関西風お好み焼き」だ。果たしてその相性やいかに……。
美人オーナー兼シニアソムリエの松坂愛さんに話をうかがった。
大阪で発見した“ワイン×お好み焼き”の魅力。その抜群の相性のヒミツは?
松坂「ナチュラルワインとお好み焼きの組み合わせには大阪で出合いました。もともとワインは好きだったんですが、5年前くらいに知ってハッ!として。それでいろんなところを食べ歩いて、自分たちになりに研究して行き着いたのが今のスタイルです」。
お好み焼きにはビール! というのが我々オッサンの常識だったりもしますが……と水を向けると……
松坂「確かに、ビールは口の中の脂を洗い流してくれますからマッチしますよね。でも、ナチュラルワインとの“マッチング”とは種類が違うんです。というのも、ナチュラルワインの味わいの表現に“出汁っぽさ”というのがあるんですが、それがポイントです」。
「赤い部屋」のお好み焼きの生地には利尻昆布と鰹の一番出汁がふんだんに使われ、山芋がつなぎの役割も果たしている。そして小麦粉をほとんど使わないことで、外はサクサク、中はふんわりした優しい味に仕上げているのだ。
上にまぶした鰹節が絶妙な出汁感を引き立てるが、さらにオススメなのが「塩」。オーダーすると一緒にサーブされる塩をパラっとふり掛けて食べると絶品で、ナチュラルワインをもっと美味くしてくれる。
松坂「お好み焼きと相乗効果を生んでお互いの素材の旨味を引き出してくれるんですよね。特にうちで使っているソースにはワインが入っているので、スムーズに飲める&食べられると思いますよ」。
美人ソムリエがお好み焼きとナチュラルワインを推す理由
もともとワイン好きだった松坂さんだが、ナチュラルワインに出合ってからは一気にその魅力に取りつかれたという。
松坂「味ももちろんですけど、ナチュラルワイン=人だから好きなんです。1本のボトルに造ってる人たちの個性がダイレクトに表現されているし、彼らが大切に造ったものはお客様に大切に飲んでもらいたい。それがかなうんですよね。だから、この店も、出会いがあったり面白い人たちが集まる場所になればと思っています」。
そう言うように、店内の壁には数々の人たちのサインが書かれている。ワイナリーのオーナーもいれば、芸術家もいれば、ミュージシャンもいる。みんな噂を聞きつけて集まり、お好み焼きとナチュラルワインの化学反応に感動した人たちだ。
ちなみに、2000枚のレコードから流れるのは、AORやジャズ、’70S〜’80S和モノと、ここもまたジャンルレス。真空管のアンプを通じて流れる音もまた、ナチュラルワインを美味くする。
これを至福の食体験と言わずなんと言う?
[店舗詳細]赤い部屋住所:東京都港区南青山6-6-21 グロービルB1電話:03-6883-4583営業:18:00~25:00(日曜定休)ぎぎまき=取材・文