OCEANS

SHARE


──大泉に移住したブラジル人はうまく溶け込んでいるんですか?
平山「大泉は一時期、治安が悪くなったんです。日本に出稼ぎに来たけどうまくいかず、なかには日本人とコミュニケーションが取れなくて生活が荒み、盗みを働いたり、ギャングの一員になったりする人もいたみたいで。だけど、だんだん日本の良さに気づいたり、大泉の人たちと接したりすることで、ここで根を張って生きていこうと決める。結婚して子供ができて、気持ちを入れ替えて真面目に働き始めたりするんですよ」。
──時間をかけて共存していったんですね。
平山「東京では、どこを歩いていても外国人を見かけますし、当たり前に共存しているように見えます。でも実際はどうか。言葉の壁でコミュニケーションを諦め、“彼らと自分たちは無関係だ”という目で見ている人も少なくない気がします。でも、大泉ではそうじゃない。日本人だろうと外国人だろうと、普通に接することがいちばん大事だと思っているし、それを徹底することで雪解けがあったんじゃないかと思います」。
──東京などの都会でも、大泉を見習えるでしょうか?
平山「ヨーロッパやアメリカで仕事をした経験があるから、海外の人たちが日本人をどう見ているか、逆に日本人は外国人をどう見ているか、それは自分なりに知っているつもりです。この本を読んで『本当にそうだな』と思ったのは、オリンピックで『おもてなし』っていう言葉が流行ったけど、そんなのできてないよねってことですね」。
──どういうことでしょう?
平山「“お客様”に対する『おもてなし』はできるかもしれない。でも、“友人”として、日本人、外国人の隔たりなく、相手をもてなす気持ちは持てているだろうか。例えば外国人を労働力として受け入れることにも閉鎖的ですし、僕が移民政策に賛成だと言っているわけじゃないけど、そのあたりの政府の方針について、真面目に考えたことがある人はどれだけいるんだろうって」。
──あまりいないかもしれませんね。
平山「外国人と普通にコミュニケーションを取る、普通に接する。オリンピックの『おもてなし』よりも大事なことだと思います。ブラジル人を受け入れると決めた大泉の人たちも当時すごい考えたと思うし、彼らの議論のほうがよっぽど進んでます。『おもてなし』もオリンピックのときだけの一過性で終わらせちゃダメだし、それをふと知らせてくれた作品です」。
──外国人やマイノリティとの接し方についてもっと考えるべきだと?
平山「本にはそこまで書かれていませんが、それを考えるキッカケにはなると思います。移民として受け入れる外国人の数が日本は少ないですよね。それも驚きですが、日本が今後どう移民や外国人を受け入れ、在日外国人や旅行者にどう接していくべきなのか。それは避けて通れない課題だし、僕は無関心がいちばんいけないと思ってます」。
 
改めて一本筋の通った、カッコいい男だと感じさせられるインタビュー。次回はユースケさんがちょうど読んでる最中だという小説『村上海賊の娘』について。
 
清水健吾=写真 TAKAI=ヘアメイク ぎぎまき=取材・文


SHARE

次の記事を読み込んでいます。