チューダーは単なるステータスシンボルではない
尾崎 今、僕の周りでは時計をしない人が多いんですが、吉原さんはやっぱり毎日着けています?
吉原 もちろん。大事な“ブレスレット”ですから、取っ替え引っ替え、いろいろしたいよね。
尾崎 同感ですね。僕の場合、引き算のポジションに時計があって。ビシッとキメて「計算しすぎてない?」っていうところに、わざとチューダーを持ってくることによって、全体の雰囲気を少し柔らかくできる。それができるのもチューダーの魅力です。
吉原 よくわかる。時計って、ただ時間を知るためのものじゃないからね。ただ、時計がステータスシンボルみたいになってる人もいるじゃない。あれ、いやらしいですよねえ(笑)。その点チューダーを選択するって、ある種そこからは離れていますよね。ステータスを見せびらかしたい人はこのセンスがわからないと思うし。そういう意味では、チューダーって“目立たないようにしている、すごくいい人”みたいな存在(笑)。
尾崎 チューダーって、ロレックスが守っている“王道”から少し外れた魅力がいろいろあるのが面白いな、と改めて思います。
上陸したチューダーで2人が欲しいのは?
尾崎 吉原さんがお持ちのもう1本は「ヘリテージ クロノブルー」なんですね。これって、名作の復刻モデルですよね?
吉原 これはですね、大変お世話になっている方から5年前に譲り受けました。僕がクロノタイムをしているのを知っているので、「今のチューダーもしてみたら?」という感じで。以来、気に入って使っています。
尾崎 お持ちの2本のチューダー、どちらもクロノグラフなんですね。
吉原 やっぱり格好いいじゃないですか。自分が小学生ぐらいのときに興味を持ったものって、時計とかクルマだったわけですけど、ちょうどその頃、アニメの『ルパン三世』の第1シリーズの放映が始まったばかりだった。その最初のほうのシーンで、ゼニスの「エル・プリメロ」が出てくるんです。
尾崎 へええ、知りませんでした! このモデルはすごく惹かれるなあ。基本的にもっと小ぶりな時計しか持っていないから、今日実物を拝見してお話ししているうちに、すごく格好良く見えてきました。
吉原 (日本での公式販売カタログを見ながら)僕はやっぱり、次に欲しいのはこれかな。「ブラックベイ ダーク」。
尾崎 格好いいですよね! やっぱりオールブラックなところがポイントですか?
吉原 そう、「男」って感じですよね。しかも、このブレスレット付きモデルで50万円を切っているから驚きですよ。
尾崎 えっ! 本当ですか!?
吉原 この「ブラックベイ クロノ」なんて、ブライトリング共同開発のムーブメントが載っていて、50万円前後という。
尾崎 コスパ感、半端ないですね。ただし、ロレックス同様、チューダーもけっこう品薄になるのではという予測が飛び交っていますよ。欲しいモデルが常にないという。
吉原 まあ、いっぱいあるよりいいんじゃないですかね。「え、ないの?」っていうのが、またそそるし(笑)。
尾崎 確かに、着ける側としての満足感は高まるかもしれませんよね。
PROFILE右●吉原隆さん/ディストリクトユナイテッドアローズでセールスパーソンを務め、カジュアルからドレスまで熟知するファッションマスター。“番長”の名で知られる大先輩。
左●尾崎雄飛さん/「サンカッケー」デザイナー。10代で単身ロンドンに渡り、サヴィル・ロウを訪れたほどのテーラード好き。時計や家具などヴィンテージへの愛も深い。
安藤夏樹=編集 いなもあきこ=文