OCEANS

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「お待たせしました〜」
「うちのグラスワインはどれも量がなみなみなんです。約220mlだから通常の倍ぐらいはあると思います」
確かに1杯で結構効きそうな量。
趣味を聞くと「お酒を飲むこと」。実に頼もしい。
「赤ワインが好きで、ビールやハイボールは飲みません。炭酸でお腹がいっぱいになっちゃって、たくさん飲めないから」
メガネストローで赤ワインを流し込む看板娘。
「あははははー、冷静に見るとひどい……。これは、去年の夏にお店のスタッフたちとバーベキューをしたときの写真ですね」
スタッフ同士が仲良しなのもこの店の特徴だ。店内に充満する和気藹々とした空気は、心温まる接客にもつながる。そして、久美さんはとにかくよく笑う人だった。
水鉄砲を構えているのが店長の塚本さん。
店長、久美さんのいいところを教えてください。
「いいところ? たくさんありますよ」「えー、恥ずかしい」
「まず、仕事をしっかりします。かなりきれい好きで掃除もバッチリ。6年目ということもあって、発注もレジ締めも安心して任せられるんです」
久美さんは前回に続く理系看板娘で、大学時代は生体医工学科で学んだ。
「研究室ではバイオナノサイエンスを専攻。抗体にしたナノフラーレンの粒子をガン細胞にくっつけてガン細胞を死滅させる研究をしていました」
「ラルフローレン」で韻を踏める粒子だということだけはわかった。
こちらは求人サイトに載っている久美さん。
お酒以外の趣味はないかと聞くと、「あっ、漫画もかなり読みます。いまハマっているのは『約束のネバーランド』という少年漫画。簡単に言うと、鬼の世界で鬼の食料として育てられた子たちが脱走を試みる話です」。
設定が斜め上を行っている。
最近はもっぱらスマホで読む。
コリドー街についても興味深い話を聞いた。洒落たイメージのある通りだが、常連もスタッフも酒好きが多く、とくに朝6時まで営業している「マルギン」という立ち飲み屋は、各店舗のスタッフや常連さん同士の交流の場なんだそうだ。
さて久美さん、お酒のお代わりをください。


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