前編の続き
直面したセカンドキャリアの壁
こうして17年にわたって現役生活を過ごした長谷川は、引退後、次なるステップとして、ビジネスマンの道に足を踏み入れる。だが、そこでも、大きな壁が立ちはだかった。
多くのアスリートがそうであるように、現役生活を終えたあとのプランを持っていなかった長谷川は、行動してみないと何もわからないと思い、友人の紹介で2カ月間ほど警備員のアルバイトを経験したあと、知人のツテでアパレル企業に就職をした。
だが、結果は、大方の予想通りだった。何もできなかった。何もさせてもらえなかった。ただ、ひたすらダンボールへの詰め作業だけを行う日々。実力不足のために、会社に対して何も貢献していない自分に、情けなさを感じた。
今までアルバイトをしたこともなく、ただひたすらサッカーだけに取り組んできた元Jリーガーは、そのプライドを切り裂かれるとともに、自分が輝く術を考え始めていた。
「実は、アスリートの場合、根性があると思われているので、採用してくれる企業はたくさんあります。でも、その先で壁にぶち当たるんです。やると決めたことに関しては根性があっても、自分がやるって決められなかったりすると、とにかくブレまくる。
周囲の方々と折り合いがつかなかったり、職を変えたり。周りからすると、プライドが捨てられないって思われがちですが、実際は、やりたいことが定まっていないことが原因なんです。やりたいことが定まらないから不安で仕方がない。
そのうえ僕の場合、家族を持っていたので、奥さんはさらに不安ですよね。女性は安定を求めますから、ケンカになるケースも多くなっていくんです」。
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