香織さんがチーズの勉強を始めたきっかけは、「4年ほど前に交際していた彼が酪農家を目指していたから」という、なかなかにピュアなものだった。
「結局別れたんですが、それとは関係なくチーズの面白さ、奥深さにハマっちゃいました」
一方で、インドヨガのインストラクターを目指していたという意外な一面もある。
「ちょうどこの村でヤギ肉のお祭りがあって、ヤギを一頭買い付ける現場にも連れて行ってもらいました。帰国時は家族みんなが泣いちゃって、バイバイするのがすごく辛かったのを覚えています」
旅の思い出は聴く者をも旅人にさせる。つまり、ワインのお代わりをします。再び、3本のボトルを持ってくる香織さん。ひと通り説明を聞いたのちに、「どれにしたと思います?」「これでしょう」。正解です。
「ぶどうの房ごとタンクに入れて密閉したのちに、ぶどうの自重で潰れていくのを待ちます。白ぶどうを使って赤ワインの製法で作るワインですね」
壁には店を訪れたワインやチーズの生産者が書いたサインもあった。
香織さんに今の仕事について聞いてみた。
「シェフの料理が大好きだし、お客さんもみんな大好き。人生を捧げられる職場ですね。今まで、仕事に行きたくないと思ったことは1度もありません」
さっきのチーズのようにとろけそうな回答だ。しかし、ワインを2杯しか飲んでいないのになんだか頭がぽわわんとする。良質なお酒は酔いの回りも早いのだろうか。あるいは、看板娘の神接客に酔ったのかもしれない。
ごちそうさまでした。最後に読者へのメッセージを。
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