評価の場面では難儀な問題
この「無知さゆえの自信」は、前にも述べたように決して悪いことではありません。分別盛りのオッサンは「無理だよ」と簡単に諦めることを、彼らは無知さゆえに無謀に飛び込み、やってみて、その結果、意外にも成功したりする。このようにして世界は進歩していくというものです。ですから、よくオッサンが息巻いて言いますが、「自信満々なあの若手の鼻を一度へし折ってやらないとな」とか言っていてはいけません。むしろ利用してナンボと考えるべきでしょう。
しかし、これが人事評価の場面においては問題になります。自分のレベル感がわからず、大抵の場合過大評価をしているので、もし、実態通りの評価がついたら自己評価とギャップが生じて不満が生まれ、表題のような訴えが起こってしまいます。評価の不満は、ややもすれば退職にもつながるような重大な問題です。放置しておくわけにはいけません。だからと言って、せっかくの自信を打ち砕けば良いわけでもありません。大変難易度の高い問題と言って良いでしょう。
誰と競争しているのかをわからせる
さて、ではどのようにこの難問に対処すれば良いでしょうか。若手が自己評価を実態以上に高く誤認してしまう理由のひとつは、人事評価の根本が「相対評価」であることをわかっていないことです。自分が目標としていたことを達成できればOKであると考えてしまうのは自然でしかたがないことですが、本来、人事評価というものは限界ある報酬原資の取り分を決めるものですから、「自分がどれぐらいできたか」という絶対評価ではなく、「他者と比べてどれぐらいできたか」という相対評価が基本です。
これまで述べたようにそもそも自信過剰な若者が、自分の仕事の出来しかみていなければ、自己評価が高くて当然です。ですから、「あなたは、この人たちと競争しているのですよ」と、リアルに相対評価の対称群となる人たちを示してあげるべきでしょう。そうすれば、自分の仕事にベンチマークができます。自分では「結構できた」と思っていても、横を見ればもっとやっているやつがいる。それがわかれば「まずい、もっと頑張らねば」となるはずです。
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