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2018.08.21

ライフ

マイホームは人生最大の作品。セルフビルドを13年間つづける男


連載「37.5歳の人生スナップ」
人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。
「37.5歳の人生スナップ」を最初から読む

13年以上をかけてセルフビルドをする、ログハウスの豪邸

理想のマイホームを持ちたい。そんなとき、たいていの人は住宅サイトや展示場を見てまわり、自分の思い描いたものに限りなく近い家を選ぶだろう。人生で一番大きな買い物だから、誰だって妥協はしたくない。しかし、現実的に100パーセント思い通りのマイホームを実現できた人というのは、少ないのではないだろうか。
そんななかで、究極のマイホームづくりを自身の手で行う男がいる。

「2005年の春から家を作り始めて、もう13年になります」。
そう話すのは、千葉県房総半島の長柄町で、セルフビルドのログハウスを建てている瀧口和朗さん(49歳)だ。現在は造園や木の家の建築、彫刻作家として活躍している。
セルフビルドとは、文字通り自分で自分の家を建てること。瀧口さんは、家の基礎工事から塗装まで、大工や職人さんと協力しつつ、そのほとんどをセルフビルドで造り上げた。
370坪という広々とした土地には、なんと5000種もの植物が植えてあり、“鳥虫獣草木花の庭”がテーマだという。そしてその庭にぐるりと囲まれて、瀧口さんの“手作り”のログハウスはあった。

庭には柑橘類やりんご、柿など、さまざまな果物が植えられている。
「屋根は作るのに、4年かかりました。一枚一枚、瓦を葺いていく作業は大変でしたね。建築には昔から興味があったので、知識は通信教育などで独学で得ました」。
ハーフティンバー様式の壁面。何層も重ねた漆喰と木骨の表面が特徴的。
正面玄関の屋根の瓦は木製。耐久性は優れているという。
フランス北東部のハーフティンバーという家屋の形式に憧れて再現した部分や、カナディアンスタイル、北欧スタイルを意識して取り入れた箇所。ひとつの家でありながら、瀧口さんの自宅は多様なスタイルを混在させ、正面、横、後ろと眺める角度によってさまざまな表情を見せる。
このログハウスを見る限り、その腕はプロの仕事となんら遜色がないものだ。家作りに関して完璧に素人だったひとりの男は、なぜこんな立派なログハウスを作り上げることができたのだろう。


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