古きをたずね新しきを知る。有り体だが、結局のところ、モノ作りの美点のような気がする。
なぜって、最新の技術によってわざと古びて見せたり、外見はオールドファッションなのに中身は最新鋭な腕時計が、こんなにも我々の心にグッとくるからだ。
TISSOT
ティソ/ティソ ヘリテージ バナナ
100年超の歴史を持つ名作がモダンな佇まいで現代に蘇る
腕に沿うようにカーブしたアール・ヌーヴォー調の縦長ケース。その湾曲ぶりから“バナナ・ウォッチ”と呼ばれた名作は実際に着用すると奇抜さは一切なく、むしろ男の色気を高めてくれる。
ダイヤル中央から放射状に描かれるアラビアインデックスやその書体がさりげない遊び心に変換される。本作では往時にはなかったSSケースを採用し、白ラッカーダイヤルと黒文字でミニマルなモノクロの世界を創出。無駄を削いだ風情もクールにキマる。
IWC
IWC/IWC トリビュート・トゥ・パルウェーバー“150イヤーズ”
デジタル表示の懐中時計を現代の技術で腕時計に再現
ジャンピングアワー&ミニッツによるデジタル時刻表示は一見斬新に思えるが、実は1884年から1890年の間、IWCが懐中時計で実現していた機構だ。
「パルウェーバー・ポケットウォッチ」と呼ばれ、当時において画期的だったこのモデルを、ブランド創立150周年記念として腕時計に再生している。
それに際して、分表示ディスクを切り替えるための専用香箱を用意する最新技術により、高い耐久性が備わった。美しい多層ラッカーダイヤルとともにレトロデザインを堪能したい。
RADO
ラドー/トラディション1965 M オート
ビル群をイメージした都会の横角ウォッチ
高層ビルが林立するマンハッタンのスカイラインにインスパイアされ、1965年に生まれた角形時計を現代の技術で蘇らせた。
ここまでエッジを立たせたケースが造形できるのは、ラドーの高い工作技術の賜物といえよう。ケースの各辺に対して3つずつ並ぶインデックスには、レトロの枠を超えた普遍の美意識を感じる。
HAMILTON
ハミルトン/カーキ パイロット デイデイト オート
ヴィンテージ飛行機の計器を匂わせる骨太な風情
日に焼けたようなベージュ夜光塗料と、分表示が記された独特なダイヤルがなんともレトロ。ヴィンテージ飛行機のアナログ式操縦計器をデザインモチーフとするパイロットウォッチだ。
そのジャンルについても世界を先駆けていたハミルトンが、アメリカ初となる定期航空便の公式時計採用100周年を祝うモデルと聞けば、実に納得である。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。
SS=ステンレススチール
渡辺修身=写真(人物) 石川英治(Table Rock. Studio)、菊池陽之介=スタイリング MASAYUKI(The VOICE)=ヘアメイク