Tシャツ選びで持つべき7の視点
夏の必須アイテム、Tシャツ。当たり前に着てるけど、それを心から楽しめているかと聞かれて、自信を持って「YES!」と言える人って少ないのでは?
シンプルなだけに奥深いTシャツをもっともっと楽しむための7の視点を紐解こう。
第2回は、価格沸騰中の「二ルヴァーナT」。
ロックTが今、世代を問わず盛り上がっている。なかでもオーシャンズ世代の青春時代、’90年代を代表するニルヴァーナのTシャツは、驚くほど価格が高騰中だという。でも、それってなぜ?
ニルヴァーナTのコレクターとして知られ、好きすぎて本まで監修・出版してしまった門畑明男さんに、その理由を聞きつつ、貴重なコレクションを公開してもらった。
1990年代当時のニルヴァーナTは、もう1万円以下では買えない
グランジと呼ばれるムーヴメントが音楽シーンを席巻したのは、オーシャンズ世代が青春真っ只中だった’90年代初頭〜中頃。その中心にいたバンドがニルヴァーナだった。1994年に自ら命を絶ったギターボーカルのカート・コバーンは、文句なしのカリスマ。とはいえ、ニルヴァーナのTシャツというと、少なくても2000年代初頭まではそんなに高価ではなかったはず。それが今では10万超えも珍しくないという。
ニルヴァーナのTシャツを15年以上コレクトし、100枚近く所有しているという門畑さんは、「2005年頃から高騰し始めて、いつしか1万円以下では買えなくなった」と語る。
セレブが愛用しているから? ’90年代ブームだから? カート・コバーンの魅力が若い世代に伝わったから? 理由はいくつも考えられるけれど、門畑さんいわく「ニルヴァーナ好きが急に増えたわけではなくて、そういういろんな状況が重なった」らしい。
門畑さんのコレクションの中から代表的なものをピックアップ。上段右からふたつめは誰もが知っているメジャーデビューアルバム『ネヴァーマインド』(1991年)のジャケプリント。このポピュラーなモチーフでも市場では1万円以上する。
ちなみに上段右端のデザインは、ジャスティン・ビーバーが愛用したことで世界的に価格が高騰したとのこと。
左上のジョン・レノン&オノ・ヨーコをコラージュしたパロディは希少で、状態が良ければ市場価格は13〜15万円と言われている。
下段右端はカートの通称“追悼T”。下段中右はマルチ(複数のモチーフ入り)、下段中左はネヴァーマインド2daysライヴT。下段左端は通称“渦巻き”モチーフ。いずれも人気のデザインだ。
“大きめ”が多いから今の気分にもマッチする
ニルヴァーナのTシャツがほかのロックTと違う特徴のひとつが、プリントの大きさとモチーフの多さだという。
「’90年代のロックTは、版が大きなものが比較的多いんですが、ニルヴァーナのTシャツは特に大きなプリントを多用したデザインがたくさんあります。それを活かすために、LやXLといった大きめサイズが数多く作られました。今のトレンドもTシャツは大きめが主流ですからマッチしますよね。あと、ブートもオフィシャルもとにかくバリエーションが豊富なのも特徴です」。
カートの死後も、あらゆるTシャツが作られた。一番右は、死亡診断書をプリントした最も有名なモチーフのひとつ。
カート自身のフォトプリ(左)は、時代に関係なく人気がある。門畑さんいわく「単純に格好良いから誰もが欲しい(笑)」。その隣りはピカソの作品をモチーフにしたもの。確かにどのTシャツも版が大きく、ボディ全体にプリントされたものが多い。
カート・コバーンこそが歴代最高のカリスマ
今のトレンドにぴったりハマる大きめサイズが多くて、目を引く大きめプリントとスタイリッシュなデザインが豊富にある。さらにここ数年の’90年代ブームも手伝って、ニルヴァーナTシャツは、世代を問わず支持されているというわけだ。とはいえ門畑さんがコレクトするいちばんの理由はそのどれでもない。
「カート・コバーンほどカリスマ性のあるロックスターは、後にも先にももう絶対に出てこないと思います。もちろん曲もアートワークも格好いいですが、ニルヴァーナの魅力は、やっぱりカート・コバーンの存在です。Tシャツを集めるのは、レア度や価格の高騰うんぬんではなくて、カートに今でも魅力を感じているから。それに尽きますね」。
門畑さんが監修し、2017年に発売したニルヴァーナのTシャツ本『HELLOH?』。多くのコレクターたちの協力のもと、133枚の貴重なTシャツが掲載されている。アーカイヴとしても圧巻。ちなみに掲載Tシャツを今の市場価格で合計すると900万円弱になる!
[話を聞いた人]門畑明男●かどはた あきお 35歳
ヴィンテージショップ、
ベルベルジンの系列店、「フェイクα」(03-3404-0168)の看板スタッフ。年に3〜4カ月はLAにバイイングに出かけては、豊富な知識と慧眼で良質なヴィンテージを仕入れている。この道15年のベテラン。
長谷川茂雄=取材・写真・文