どうやら2018年は輸入コンパクトSUVの当たり年のようだ。上半期だけでも多くの魅力的なモデルが上陸したが、なかでも注目したいのはボルボ XC40とジャガー Eペイスである。
他国資本という強力な後押しを受けて急成長を遂げるボルボとジャガー。似た境遇から生まれたこの2台。クルマ市場の最激戦区で軍配が上がるのはどっちだ?
群雄割拠のシティ・コンパクトSUV市場。なかでも…….
クルマに興味のある人なら、今やボルボは中国のジーリー、ジャガーはインドのタタ・モーターズの傘下にあるということはご存じだろう。
ボルボやジャガーという歴史あるブランドが他国のメーカーの傘下に入る、ということにひょっとしたら複雑な気持ちになる人もいるかもしれないが、実際には両ブランドの開発陣はとてもハッピーに捉えている。
何しろジーリーもタタ・モーターズも、歴史あるブランドを我が物顔でコントロールしたいのではなく、その技術やノウハウを存分に発揮させたいと願っているのだ。近年のボルボとジャガーのクルマが「素晴らしく出来がいい」と評される理由はここにある。
開発陣は本当に造りたいクルマを造れる環境を得ることで、XC40やEペイスといった魅力的なモデルを生み出したのだ。
伝統の息づく安定性が光る!
Volvo XC40 ボルボ XC40
ボディサイズ:全長4425×全幅1875×全高1660㎜
燃費:12.4㎞/L(JC08モード)
総排気量:1968cc
価格:389〜559万円
ボルボ最小クラスのSUV。特筆すべきは、上位モデルと変わらない安全機能を標準装備、世界一と評される安全技術が惜しみなく投入されている点。従来のボルボデザインから変化をつけたポップなデザインは、今のコンパクトSUVのトレンドでもある。
ブランド初のコンパクトSUVは躍動感溢れる走りが魅力
Jaguar E-PACE ジャガー Eペイス
ボディサイズ:全長4410×全幅1900×全高1650㎜
燃費:非公表
総排気量:1999cc
価格:451万〜764万円
ブランド初のSUVであるFペイスの弟分としてデビューしたEペイス。スポーツカーブランドらしい走行性能や強力なエンジンをラインナップし「走る楽しさ」を徹底的に追求。ライバルひしめくSUVカテゴリーで「小さく、速く、楽しい」を武器に勝負を仕掛ける。
各々の個性がぶつかり合う5番勝負を実施した!
走行性能や快適性など、クルマを評価するうえでの基本的な5項目をもとに両者をジャッジ。それぞれの特徴が、こんなにも顕著に!
ROUND 1:走行性能
走りに関してはジャガーブランドの強さが際立つ。ハンドリングやサスペンションの設定など、熟練の技が生み出す俊敏な走りはコンパクトだけでなく、すべてのSUVのなかでも上位に位置する仕上がりだ。
XC40も決して悪くはないが仕上げの方向性はあくまで快適方向。「クルマ本来の走り」という意味ではEペイスに軍配が上がる。
XC40 ★★★
E-PACE ★★★★★
ROUND 2:快適性
足元を含めた車内空間の広さやシートの出来、何よりコンビニ袋を下げられるフックを用意するなど、XC40の快適性は非常に高い。また、そういう細かい配慮がなされているのも日本市場にマッチしている。
Eペイスも価格帯からすれば十分な出来映えだが、スポーツ走行性能を得た代わりに、快適性はやや犠牲になっている感が否めない。
XC40 ★★★★★
E-PACE ★★★
ROUND 3:安全性
ボルボのすごさはエントリーモデルであるXC40にも上位モデルと変わらない最高の安全技術を採用する点にある。衝突安全性能から危険回避のさまざまなシステムまで、コンパクトSUVの中では間違いなく世界一の性能だ。
対するEペイスも自動緊急ブレーキやレーン・キープ・アシストなど十分な装備だが、ボルボがすごすぎるのだ。
XC40 ★★★★★
E-PACE ★★★★
ROUND 4:テクノロジー
新開発のプラットフォームや歩行者などを検知する高性能カメラセンサー、使いやすいインターフェースなど、随所に技術力が光るXC40。
EペイスもSUV のスペシャリストであるランドローバー社のプラットフォームを存分に活かした悪路走破技術や、インフォテインメントシステムなど高い完成度を誇る。
技術面での評価はまったくの互角だ!
XC40 ★★★★
E-PACE ★★★★
ROUND 5:デザイン
デザインは個人の好みで大きく分かれると思うが、Eペイスの美しい曲線を描くシルエットはエレガンスを感じさせる。パッと見ても「走りの良さ」を印象づけ、クルマの個性にもマッチしているのが◎。
XC40はこれまでのボルボにないデザインにチャレンジしているため、万人受けは難しいが、ハマる人にはその目新しさも魅力的に映るはずだ。
XC40 ★★★★
E-PACE ★★★★★
群雄割拠のコンパクトSUV市場において、それぞれの伝統を活かした個性は強力な武器になる。乗りやすく使いやすい万能コンパクトSUVが増えるなか、だからこそ、この2台が光るのだ。
ライバル同士ではあるけれど、それぞれ性格が異なるためジャッジはイーブン。どちらの個性が好きか? ということになるが、間違いなく言えるのは、ボルボもジャガーも本当にいいクルマを造る、ということだ。
大子香山=写真