パパは家事も育児も一生懸命やっているつもり、ママにも最大限気を使っているつもりなのに、なぜかママがいつもイラっとしている。そんな夫婦間のギャップの原因を、ママ目線から解説するこの連載。ママがイラっとする原因のひとつとして、ママの困りごとや家庭のピンチに対する夫婦間の温度差というものがあげられます。今回は、子供同士のトラブルが起こった際の、ママへの接し方について、育児・教育ジャーナリストであり、自身も2人の子供のパパであるおおたとしまささんに教えてもらいました。
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トラブル対応では、パパは汚れ役に徹するくらいがちょうどいい
前編では、子供同士のトラブルが起こった場合、初期対応したママに対して、パパがどう接したらいいのかを教えてもらいました。後編では、解決に向けてパパが具体的に介入する場合の注意点をお聞きします。
ケンカやいじめなどの子供同士のトラブルでは、当初ママが対応していたものの、なかなか解決に向かわない場合に、パパが出ていくことも。しかし「鼻息荒くパパが出ていって、余計に揉めました」という声もちらほら。何がいけなかったのでしょうか?
「お父さんが出ていく場合、『俺が解決してやる!』となりがちですが、自分がヒーローになるという気持ちはまず捨てましょう。お母さん同士で揉めてしまっているなら、まずパパができるのは謝ること。『妻からも子供からも事情は聞きました。ご迷惑、ご心配をおかけしまして……』と謝った上で、『今、こういう問題がありますよね』と、相手の保護者と一緒に問題を解決して行くような空気に変えていく役目を意識するといいのではないでしょうか」(おおたさん、以下同)。
相手もパパが出てきた場合、ついつい男同士だと相手をねじ伏せたりマウントを取りたがったりする人がいますが、そういった不毛な争いはまず避けるべき。「勝つための解決になってしまったら最悪です」とのこと。ヒーローになるのではなく、汚れ役になるくらいの気持ちで対応するといいそうです。
ママが聞いても子供が答えてくれない。パパなら、どう話を聞く?
もうひとつ、子供同士のトラブルでパパが活躍できるのは、子供の言い分を聞く時。特に男の子の場合、ママだと「話してくれない」「聞いてもよくわからない」ということがあります。そんな時はパパの出番です。
「思春期になってくると、いくら親が共感的に話を聞いたとしても反発されます。僕も過去に長男から『お父さんはいつもそうやってカウンセラーみたいに話をする』と反発されました(笑)。そこで、ひとつのコミュニケーションの手段として、自分の過去の経験を話すというのはあると思いますね。例えば『お父さんも子供の頃、間違えて友達を怪我させちゃって。おじいちゃんと一緒に謝りに行ったんだ』とか。あるいは、細かいことはあまり言わずに『卑怯なこと、ずるいことだけはするな』と、行動の指針を示すだけという方法もあると思います」。
PTAでパパ友を作っておくと、困った時に助けてもらえる
また、トラブルなどを早く解決に向かわせるために有効なのが、親同士のネットワークだとおおたさんは言います。
「PTA活動や地域ボランティア活動などに参加して、保護者同士の繋がりを作っておくと、何かあった時に助けてもらえます。トラブルの相手が面識の無い人でも、誰かが『おおたさん、変な人じゃないから警戒しなくても大丈夫だよ』と相手の親に一言言ってくれるだけで相手の安心感は違いますよね。先生とも顔見知りになれますし。僕も、小学校の有志のパパが集まってやっている“おやじの会”や地域の自治会活動に参加していますが、いろいろな場面で助けられました」。
PTAの役員までやらなくても、イベントのお手伝いをするとか、パパ同士の飲み会に時には参加するだけでも違うとのこと。
「めんどくさいと思うかもしれませんが、パパ友を作っておくと、万が一ママ同士で揉めた場合でも、パパ友がセイフティーネットになります」。
子供同士のトラブルは、程度の差はあれ、どんな子でも経験すること。そういう経験を通して、親も子供も成長していくものだと、おおたさん。
「成長のためには、多少のトラブルはむしろ経験したほうがいいんですよね。面倒なことが起こったな……ではなくて、成長のための教材なんだという発想を、頭の片隅に持っておくといいと思います。とはいえ、言うは易しなんですけどね(笑)」。
子育ては基本ママに任せているというパパもいると思いますが、いざという時にマッチョなヒーローを気取って登場し、火に油を注ぐようでは最悪。普段から子供の話を聞いたり、地域に顔を売っておいたりできてこそ、本当の意味で“頼れるパパ”といえるのですよ。
【Profile】
おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト。リクルートで雑誌編集に携わり、2005年に独立。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を持ち、パパのための相談サイト「パパの悩み相談横丁」を運営。著書に『ルポ 父親たちの葛藤』(PHP研究所)、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎)、『ルポ東大女子』(幻冬舎)などがある。 取材・文=相馬由子
編集者、ライター。合同会社ディライトフル代表。子育てをテーマにした雑誌、ウェブ、書籍などの企画・編集・執筆を手掛ける。2017年より某育児・教育系ウェブメディアの編集長を務めている。再来年に娘の小学校入学を控え、学童に入れるのかが目下の悩み。イラスト=佐野さくら