パパは家事も育児も一生懸命やっているつもり、ママにも最大限気を使っているつもりなのに、なぜかママがいつもイラっとしている。そんな夫婦間のギャップの原因を、ママ目線から解説するこの連載。
ママがイラっとする原因のひとつとして、ママの困りごとや家庭のピンチに対する夫婦間の温度差というものがあげられます。そこで今回のテーマは、前回のインフルエンザと並ぶ、冬にもっともかかりたくない感染症のひとつ・ノロウイルスへの対応についてです。
「自己評価の高いパパ」と「いつも何かが不満なママ」を最初から読むママたちがもっとも恐れる感染症「ノロウイルス」ノロウイルスと聞いて「胃腸炎のひとつで、かかるとかなり重症化する」くらいの認識は持っているパパも多いと思います。また、保育園や幼稚園などで、「ノロウイルスにかかった子がいる。移ったら大変!」とママたちが騒いでいるのを聞いたことがあるパパもいるでしょう。
その感染力は強力で、「家族のひとりがかかったら全員に移った」とか「保育園で嘔吐してしまった子供がいて、正しく嘔吐物の処理はしたはずなのに、その後、その子を抱っこしていただけの保育士が感染した」など、その感染力の強さを物語るエピソードは、たびたび耳にします。ママたちがもっとも恐れている感染症といっても過言ではないでしょう。
しかし、意外とその怖さを知らないパパも、なかにはいるという話もあります。子供が3歳のときにノロウイルスに感染したという洋子さん(仮名)は、もっとパパにノロウイルスの怖さを伝えておけばよかったと後悔したとのこと。
「娘が3歳の頃、夜中に突然嘔吐しまして。保育園でひどい胃腸炎にかかった子がいて、ノロではないかとの話だったので、やっぱり来たか……と。夫も、片付けたり、娘のお世話をしたりと、手伝ってはくれたのですが、汚れたものを素手で片付けようとしたり、軽く水で流しただけで洗濯機に入れようとしたりと、いろいろ間違っていて。保育園から配られていた、ノロウイルスにかかったときの処理マニュアルを夫にも共有しておくべきでした」。
そもそも、ノロウイルスがなぜそれほど恐れられているのでしょうか。ノロウイルスには次のような特徴があります。
・ワクチンも特効薬もない
・感染力が強くほんの少しのウイルスでも発症する
・ウイルスの種類が多く、一度かかってもまた別の種類のウイルスに感染する
・洗剤やアルコール消毒剤は効かない
・乾いてからも空気中を舞い、それを吸い込んだだけで感染する
こういった特徴から毎年冬になると大流行を引き起こすそうです。もし家族がかかってしまった場合、嘔吐物などの処理の際には細心の注意を払わないと、家族全員感染・発症ということになりかねません。
また、感染経路も知っておきたいところです。ノロウイルスは、感染者の便や嘔吐物に含まれていて、それを処理するときにうっかり手などにつき、それが体内に入って感染します。耳かき1杯程度の便に、なんと1億個ものウイルスが含まれているのだそうですよ。
さらには、子供が嘔吐して、それを片付けたときに、万が一床などにウイルスが残ってしまった場合、乾いた後も、感染力を持ったまま空気中を舞います。それを吸い込んだ場合も感染してしまうのです。
そのほかにも、ウイルスが手についたまま食品を触って、それを食べた人が感染したり、下水から海に流れていったウイルスが、牡蠣などの二枚貝の体内に溜まり、それを食べた人が感染するという感染経路もあります。どれだけ感染力強いんだ、ノロウイルス!
ノロウイルスに効果があるのは「熱湯」と「塩素系漂白剤」子供が感染してしまった場合に、家族全員発症という事態を避けるために最低限覚えておくべきことのまずひとつは、ノロウイルスの消毒には「85度以上のお湯に1分以上浸す」または「塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)」を使うこと。アルコール消毒では効果がないのです。
衣類やリネン類の消毒はもちろん、床や壁などに飛び散った汚物も、この方法で消毒する必要があります。汚物の処理を行う場合は、使い捨ての手袋やエプロン、マスクを着用し、自分への感染を防ぐ&なるべく周囲に飛び散らないように気をつけて行うことも大切です。
※次亜塩素酸ナトリウムの濃度や詳しい手順など、詳細は厚生労働省や各自治体などのホームページで公開されているので、それらを見ていただくとわかりやすいです。
つまり、ノロウイルス感染症の可能性がある場合、汚れた衣類やシーツ、部屋の床や壁などを、いつもとおりに気軽に洗濯・掃除してはいけないということなんですね。
そのほかにも、処理が終わったあとには換気をよくする、汚れた衣類やリネン類は、もし古いものならビニール袋に密閉して捨ててしまったほうが安全ということも言われています。ちなみに、床や壁などには、必ずしも効果が期待できるわけではなく、また素材にもよっては使えない場合もありますが、スチームアイロンやドライヤーなどで熱を加えるという対処法もあるそうです。また、最近では、ノロウイルスに効果があるとされる消毒剤や、嘔吐物を固める薬剤と使い捨ての手袋やエプロンなどがセットになった処理キットも市販されているので、準備しておいてもいいかもしれません。
ママたちがここまでノロウイルスを恐れる理由を、理解していただけましたでしょうか? 私も子供を保育園に入れる前は、ノロウイルスに対してここまでの認識はありませんでした。しかし、保育園の入園説明会で、ノロウイルスにかかったときの対処法というマニュアルが配られ、ここまで厳重に接しなければならないことを初めて知りました。
特に高齢者や子供は、下痢や嘔吐がひどいと脱水症状になったりもするので、万が一家族の誰かが感染した場合、それ以上広がらないように注意したいものですね。
文/相馬由子
編集者、ライター。合同会社ディライトフル代表。子育てをテーマにした雑誌、ウェブ、書籍などの企画・編集・執筆を手掛ける。2017年より某育児・教育系ウェブメディアの編集長を務めている。再来年に娘の小学校入学を控え、学童に入れるのかが目下の悩み。イラスト/佐野さくら