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2018.01.17

ファッション

「ジラール・ペルゴ」の哲学についてCEOが語ったこと

225年を超える歴史を持つジラール・ペルゴ。「ロレアート」をはじめとした、時計好きを唸らせるハイクオリティなモデルを揃えるブランドである。今現在のブランドの展望を、CEOのアントニオ・カルチェ氏が語ってくれた。
 
ジラール・ペルゴとは?
時計作りの聖地、スイスのラ・ショー=ド=フォンに工房・製造部門を構えるウォッチブランド。その歴史は1791年にまで遡る。時計師ジャン=フランソワ・ボットがジュネーブで設立した時計製造会社が源流。
その後、時計師コンスタン・ジラールと妻マリー・ペルゴの結婚を機に、1856年にジラール・ペルゴとしてブランドがスタートした。数少ないマニュファクチュールとして時計ファンから高く評価されている。
 

「創業以来“精度”を徹底的に追求し続けています」

ソーウインドグループ CEO アントニオ・カルチェ氏。1967年、イタリア生まれ。マイクロテクノロジーと経営学の学位を取得後、’94年にピアジェの技術部門の責任者としてリシュモングループに入社。2000年にパネライのゼネラルディレクターに就任する。’05年には副社長としてコルムに迎えられ、組織と経営構造の見直しに尽力する。’14年1月、ジラール・ペルゴを擁するソーウインドグループのCEOに就任。一貫して高級腕時計業界で豊富な経験を重ねてきたプロフェッショナルである。プライベートでは3人の娘を持つ良き父親。
実に2世紀を超える歴史を持つマニュファクチュール(※1)、ジラール・ペルゴ。時計ファンからも時計業界からも敬意を集めるブランドながら、実際のモノ作りを知る人は、意外に少ないのではないだろうか。
「私たちが培ってきた時計作りのノウハウは計り知れない財産ですが、CEO就任以前は、実は私にとってもニッチなブランドという印象でした」。
そう語るのは、ジラール・ペルゴを擁するソーウインドグループのCEO、アントニオ・カルチェ氏。名だたるウォッチブランドでキャリアを重ねてきたこの人物がニッチだというのだから、我々としても少しホッとする。
「創業から続く時計作りの哲学のひとつが、精度の追求です。1957年には、超薄型の高振動自動巻きムーブメント“ジャイロマティック”を導入。’71年にはスイス国内初のクオーツムーブメント(※2)を発表しました」。
そのクオーツムーブメントを搭載したのが、’75年に発表された「ロレアート」。八角形のベゼルとケース一体型ブレスレットが特徴の、ジラール・ペルゴを代表するモデルのひとつだ。
「幾何学的かつ堅苦しくない八角形のベゼル形状。この腕時計は第一世代から第三世代まで時代ごとに刷新されてきましたが、基本的なキャラクターは変わっていません。誕生時から個性が確立されていたからこそ、現在素晴らしい“古典”になり得ているのです」。
カルチェ氏がCEOに就任したのは2014年。突出した歴史と技術力を備えたこのブランドにおいて、最初に取り組んだこととは何だったのか。
「当時の会社の状況は決して良好ではなく、本来の哲学のひとつである積極的な商品開発が実現できていませんでした。私はまず、225年の歴史を深く理解するために、製造部門のすべてを見て回りました。そのうえで、若い世代にとってデザインと価格の両面で魅力的な腕時計とは何かを考え、商品構成を見直したのです。そしてこれまでになかった新しい価格帯で30以上のモデルを作りました。例えば文字盤からムーブメントが透けて見える三針時計“ネオ・ブリッジ”などがあります」。
そして’17年、ブランドの技術的、審美的ベンチマークである先述の「ロレアート」のラインナップ充実を図った。
「シンプルな三針、文字盤がスケルトンのタイプ、フライングトゥールビヨンを搭載する複雑機構のモデルまで、全38種類を揃えました」。
原点を見つめ直し、基礎を固めて積極的なモノ作りを進める。挑戦心を取り戻したこの老舗ブランドの今後の動向には注目せざるを得ない。
「歴史と技術はもちろんかけがえのないものですが、ケリング(※3)という大きな企業体の一員となったことも実は大きい。単発的な取り組みに終始せず、腰を据えて、長期的な戦略を練ることができますから。私はこのブランドの将来性に大きな自信を持っています」。
 
マニュファクチュール(※1)
開発、デザインをはじめとして、ムーブメント、ケースからベルトなどの各部品にいたるまで、一貫して自社製造する時計メーカーのこと。時計のすべてを生産し組み立てている、数少ない存在である。
スイス国内初のクオーツムーブメント(※2)
日本製クオーツが台頭した1960年代後半、ジラール・ペルゴは独自にクオーツ開発を進める。そして’71年、のちに世界規格となる高周波数の自社製クオーツムーブメントを発表した。
ケリング(※3)
フランスを拠点とする、多くのラグジュアリーブランドを傘下に置くコングロマリット。グッチ、ボッテガ・ヴェネタ、ブリオーニ、ブシュロンなど、錚々たるブランドが名前を連ねている。
 
加瀬友重=文


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