作り手の想いが深いほどにアイテムは魅力的に見える。そんな経験、これまでにたくさんしてきたでしょ。で、それをより実感するのがこちらの腕時計。
「オメガ」の腕時計
ちょっと風変わりな見た目だが、ご存知スピードマスターである。失明防止のための社会活動団体「オービス・インターナショナル」を支援するチャリティモデル。その特徴は楕円形のサブダイヤル&日付窓、そしてクロノ針のウエイトとケースバックに象られたテディベアだ。これは幼い患者の気持ちを和らげるべく、オメガが提供しているぬいぐるみに由来している。
また、オメガの新アンバサダーのプレスリー・ガーバーは、同団体と密接な関係のシンディ・クロフォードの息子という点も縁が深い。限定ではなく長く販売するというオメガの気概も含め、“アイ”情が込められた1本だ。
「リシャール・ミル」の腕時計
腕時計と自転車。両業界の異端児が作った腕時計が話題だ。その異端児とは、リシャール・ミルとアランプロスト。片や独創的なウォッチメイキング、片やフォーミュラーEに積極的に参画と、イノベーティブなマインドが共通する納得のコラボである。
仕上がった時計は、プロストが熱を上げ、愛情を注ぐ自転車用で、手動入力による積算総合距離計を装備する。これだけでも唯一無二のメカニズムなのだが、お家芸のトゥールビヨンを非対称の多層構造のカーボンTPTケースに搭載する、実に「らしい」仕上がり。アナログ時計にはまだまだ極めるところがある。その価格と同じく大きな夢を感じさせてくれる腕時計だ。
患者への愛、自転車への愛。注ぐ対象は異なるけれど、想いの強さや温かさは一緒。これだけ愛に包まれたアイテムなら、身に着けるほうも自然と幸せに思えてくるんじゃないだろうか。
鈴木泰之=写真 鈴木淳子=スタイリング