ロマンティシズムを静かに語る機械式時計には大人としての素養がのぞく。
ガジェット気分で気軽に持てるスマートウォッチは仕事時の良き相棒に。
どちらも大人にとっては大切な一本になるはずだ。その最新が非常に興味深い。
今もっとも正確に時を刻む「ゼニス」の腕時計
主にゼンマイがほどける力を、振り子の役割を果たすテンプと、ヒゲゼンマイなどからなる調速機構によってビートに変換し時刻を表示する機械式腕時計。17世紀以来変わらなかったこの基本構造を、ゼニスが新作「デファイ ラボ」で変えた。
写真の部品は、「オシレーター」と呼ばれる単結晶シリコンの構造体。これが従来のヒゲゼンマイ、テンプ、脱進機の役割をオールインワンで担っている。精度は非常に高く、このブランドが誇る高振動キャリバー「エル・プリメロ」の3倍、15ヘルツ(毎時10万8000振動)という周波数で振動。平均日差0.3秒(1カ月で10秒も狂わない)を実現した。
わずか0.5㎜という薄さで、強度や耐磁性、メンテナンス性にも多大なメリットを持つというこの画期的なオシレーター。まさにゼンマイにこだわるスイスウォッチの矜持を具現するものと言えるだろう。
「ウェナ×ビームス」のウォッチベルト、腕時計
世界で初めてスマートウォッチの機能を内蔵した時計ベルトを発表し、昨年来話題となっている「ウェナリスト」。ビームスとのタッグによる第2弾は「よりアナログな顔つき」がポイントだ。
バックル部分に電子マネー機能、スマホと連動した通知機能、歩数などの活動ログ機能という3つの機能を装備。ベルトのみ購入して手持ちの時計に合わせることも可能なのである。
それにしてもここまで普通の顔つき(いい意味で)だと、便利な機能があることをつい忘れてしまいそう。
確固たる伝統をベースとした一本と、次世代の騎手として注目を集める一本。その最新は、前者が革新的アプローチを試みたのに対し、後者はある種の原点回帰によって生み出された。
その真逆なアプローチが面白い。古き佳きものに敬意を払い、新しいものにも興味深々なオーシャンズ世代には、たまらない2本なのだ。
鈴木泰之=撮影、鈴木淳子=スタイリング