お酒好きの「じゃあ一杯だけ」は「やあどうも」程度の意味しか持たない。しかし、魅力的なそれを目にした時は、それ以上の感情がこもるように思う。感情の昂りをもたらす、そんな極上一杯とは。
「マイアム」のワインセット
冒頭にも述べた一言は本音やその場を取り繕う際の常套句だが、「テロワール・ド・スペリウール」は正真正銘一杯だけのワインセットである。100mlのビンが5本。赤2種、白2種、ロゼ1種で、いずれもプロのソムリエがフランス各地から厳選したものを、ボルドーにてビン詰め。徹底した品質管理のもとに運ばれてくるのだ。
デザインもモダンで洒落ているし、それぞれのワインの解説も付く。ワイン好きへのギフトとしてはベストなのでは。ただ量もイケる人向きにはちょっと足りないか? いやいや、そこは1杯のうまさを大切に味わってくれるでしょう、ということで。
「ジェムソン」のウイスキー
データの先祖返りは避けたいものだが、この酒においては先祖返りによって新たな魅力を獲得したようだ。
1780年から続くアイリッシュウイスキーの名門、ジェムソン。その新作「ジェムソン カスクメイツ」は、ウイスキーの味の要となる樽熟成に、同郷のスタウトビール「フランシスカン・ウェル」の樽を後熟に使っている。これにより、微かなホップのフレーバーが加わり、より複雑な味わいを得たのである。さらに言えばフランシスカン〜の樽は、もともとジェムソンの熟成樽を使用。つまり巡り巡って実家(?)の樽に収まったともいえるのだ。
このコラボ、ジェムソンの醸造責任者とフランシスカン〜の創業者が地元のパブで意気投合したことがきっかけなんだとか。やはり酒は和(輪)を生む!?
お酒の魅力は確かに美味しさももちろんある。でも、ギフトとして贈ったり、見知らぬ人と与太話に花を咲かせたりと、人と人をつなぐコミュニケーションツールになりうるところがまた素晴らしい。これらのアイテムを見ればそれも分かるんじゃない?
鈴木泰之=写真 鈴木淳子=スタイリング