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2017.10.22

ライフ

あなたも持っているかも? 認知症にまつわる誤解や偏見


「37.5歳のもしも……」を最初から読む
あまり考えたくはない未来の「もしも」が、人生には必ずある。夫婦のこと、子どものこと、両親のこと、会社のこと、健康のこと、お金のこと、防災のこと――心配しだすとキリがないけれども、見て見ぬフリをするには、僕たちもそう若くはない。今のうちから世の中の仕組み、とりわけ社会保障(セーフティネット)について知っておくことは、自分の大切な人たちを守るためにも“大人の義務教育”と言える。37.5歳から考える未来の「もしも」――この連載では「親の認知症」について全6回で考えていきたい。

社会的弱者への偏見や差別をあらわす「スティグマ」とは?

「スティグマ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 「スティグマ」とは、“汚名の烙印を押される”といった意味があり、心身の障害や貧困による社会的な差別のことを指します。他者や社会集団によって個人に押し付けられた、ネガティブな意味の不当なレッテル、とも考えられます。
もともと「スティグマ」は、古代ギリシャで一般市民との判別をつけるため奴隷や犯罪者の身体に刻印した徴(しるし)が語源でしたが、1960年代にアメリカのゴッフマンという学者によって「ある特徴を理由に、その人(集団)を社会から除け者にすること」の意として使われるようになりました。古くはハンセン病患者、最近では生活保護の不正受給報道など、社会的弱者への偏見や差別の問題はずっと続いてきたのです。
認知症についても社会的な「スティグマ」は根深く、その誤解や偏見のせいで精神病院や閉鎖病棟に入院させられ、薬物による行動制限や身体拘束を受けた人もかつては多かったと聞きます。現在では認知症への理解と法整備が進んだことで、以前のような不当な処遇は少なくなったと思いますが、それでも「認知症へのスティグマ」は依然として存在しています。
認知症への偏見や差別はいけないことだ、と頭で理解している人でも「スティグマ」を作ってしまうことがあります。たとえば、認知症に対する知識や経験がないので「どう対処してよいかわからない」。そのうち「私では難しそうだ」「なのでそういった人に関わらないでおこう」となってしまう。消極的理由であっても、社会的な偏見や差別が生まれてしまう、そこがこの問題のややこしいところでもあります。
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あなたの認知症へのスティグマ度はどれくらい? 15の項目でテストしてみよう

それではさっそく、自分自身の認知症へのスティグマ度をテストみましょう。「あなたが認知症の人をどう思っているか」と「あなたが認知症になったときどう思うか」の大きくふたつのテーマで15の質問を作成してみました。
以下の質問に5段階で答えてください。
そう思う…1 まあそう思う…2 どちらともいえない…3 あまりそう思わない…4 そう思わない…5
<あなたが認知症の人をどう思っているか>
・認知症の人は、私が何を言っているか理解できない。( )
・認知症の人は、自分の本能的な欲求のままに生活している。( )
・認知症の人は、何を言われてもすぐ忘れてしまう。 ( )
・認知症の人は、他者に気遣うことができない。( )
・認知症の人は、何をするかわからない。( )
・認知症の人は、他人を煩(わずら)わせないような環境で生活するのが最善である。( )
・認知症の人は、公共の施設を利用するのが難しい。( )
・認知症の人は、複雑で面白い会話ができない。( )
・認知症は病気なので、医療や薬による治療が優先されるべきである。( )
・徘徊など認知症の行動・心理症状には、社会的要因や環境的要因は無関係である。( )
<あなたが認知症になったときどう思うか>
・もし自分が認知症になっても、家族にはそれを知られたくない。( )
・もし自分が認知症になったら、近所の人にはそれを知られたくない。( )
・もし自分が認知症になったら、周囲の人々は、私のことを真剣に考えてくれなくなると思う。( )
・もし自分が認知症になったら、悲しく当惑すると思う。( )
・もし自分が認知症になったら、日常生活のいろいろなことができなくなると思う。( )
すべての質問に1~5で答えられましたでしょうか? すべての合計点を算出して、その点数が35点より低い人は、認知症へのスティグマ度が一般平均よりも高い傾向にあると思ってください。だからと言って、あなたが認知症介護に向いていないわけではありません。「認知症サポーター講座」など、企業や地域で認知症を学ぶ機会を通じて、正しい理解を深めていくことでスティグマ度は下がっていきますから。
自分の認知症に対するスティグマ度を知ることは、あなた自身の認知症に向き合うためのスタートラインを知ることになります。今回のテストで、スティグマ度が高かった(合計点数が低かった)人も、スティグマ度が低かった(合計点数が高かった)人も、実際に認知症になった親へ寄り添うときに上記15項目をあらためて振り返ってもらえればと思います。
次回は「認知症の種類によって、家族の対応はどう変わるか?」をテーマにしたいと思います。
※参考文献:
・「認知症サポーター養成講座標準教材」(全国キャラバン・メイト連絡協議会)
・「平成28年度認知症の早期発見促進のための教育プログラムと早期発見を初期集中対応に連続化させる効果的手法の開発に関する調school査研究」(特定非営利活動法人日本介護経営学会)を元に筆者がスティグマ度テストを作成
取材・文/藤井大輔
リクルート社のフリーマガジン『R25』元編集長。R25世代はもちろん、その他の世代からも爆発的な支持を受ける。2013年にリクルートを退職し、現在は地元富山で高齢者福祉事業を営みながら、地域包括支援センター所長を務め、住民向けに認知症サポーター講座を開催している。主な著書に『「R25」のつくりかた』(日本経済新聞出版社)

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