店員の人に愚痴っていたり、ずっとスマホをいじっていたり、さびしいと思われるのが心配だったり……。いやいや、男のひとり飯ってもっと自由で格好いいもんなんです! そこで目指すべきは“グルメ・ヒトリスト”。すなわち自由に食を謳歌する一匹狼です。女性が思わず惚れるような“グルメ・ヒトリスト”を目指すべく、ひとり外食の楽しみ方や振る舞い方を、達人に教えてもらいましょう!「ひとりで店には入れない」なんて後ろ向き。イメージが180度変わる、ひとり飯のすごい世界とは⁉︎
「ひとり飯」を最初から読むお客さんの笑い声と温かい光が漏れ、居心地がよさそうなお店の前を通りかかると「こんな場所でひとり、お酒とおつまみを楽しめたらな」と思う。そんな「気になるお店」ってありますよね。
でも、店内の様子もわからないところに、いきなりひとりで足を踏み入れる……ひとり飯に慣れている私でも、緊張する瞬間です。とくにこぢんまりと小さなお店は、常連だらけでアウェイ感が漂ったらどうしよう、なんて余計なことを考えてしまうことも。
でも、“ひとり飯の達人”である本郷さんによると、男性が初めてひとり飯にチャレンジするとき、小さな和食のお店がオススメだそう。しかも「夫婦で経営している料理屋」がベスト! その理由はいかに?
富永:男性が初めて、ひとり飯をするとき、なぜ小さなお店がよいのでしょうか? 小さいとかえって入りにくい気も……。
本郷:僕にとってはひとり飯って、ある店に一回だけ行くことが目的ではなくて、何度も通える店を見つけることが目的なんです。通いながら、自分にとって心地よい「ひとり飯」に適した店かどうかを確かめていきます。だから、お店に覚えてもらって、会話がしやすいことはとても重要。通える店を探すときは、小規模なお店がいいですね。
富永:ひとり飯で「アウェイ感が漂ったらどうしよう」と緊張するのは、最初から100点満点の居心地のよさを、求めてしまっているからかも。自分にとって、その店はいわば“初対面の相手”ですが、それは店側にとっても同じですよね。通っていくうちにだんだん、店と自分との相性が見えてきて、ひとり飯に使える店かどうかがわかってくる。
本郷:その時の状況や性格によって、求める「ひとり飯の店」って違うと思うんです。お店の人や常連さんなどと知り合って、会話ができる店に行きたいこともある。一方で、考え事や読書をしたいから、ゆっくりと静かに長居できる店がいい場合もある。いずれにしても、店の人に自分がどんな人間で、何が好きなのかを覚えてもらえると、どんどん居心地がよくなります。
富永:小さなお店だと、初訪問のあとすぐに2回目に訪問すると、あっという間に覚えてくれますよね。
本郷:通ううちに、好みが伝わって裏メニューを出してくれたりね(笑)。あとは店の人が「この常連さんと仲良くなれそう」とつないでくれたり、「今日はあまり話したい気分じゃないのかな」と察してくれたり……覚えてもらえると、いいことがたくさんあります。
富永:小さなお店で、あえて「夫婦経営のお店がいい」という理由は?
本郷:覚えてもらうには、店側のスタッフの入れ替わりが激しくないことも大切なポイントです。小さな店であれば、アルバイトも友人や近所の人のことが多くて、さほど入れ替わりはないものですが、夫婦経営であれば特に安心。通っていた店で、45年間ずっとご夫婦でやっていた店がありましたが、いつ行ってもおふたりが安定した接客をしてくださるので、とても居心地がよかったです。
富永:カウンターのあるお店、というのも気楽でいいですよね。カウンター越しにお酒や料理を出してくださるタイミングで、話しかけやすいですし。
本郷:そうですね。和食の店はとくにカウンターがあることが多いので便利。8席~10席くらいの規模が理想的です。どうしても小規模な店には入りにくいという場合は、まず一回目は友達や同僚を誘って行ってみる。そのあとすぐに、ひとりで訪問するのがオススメです。覚えてもらうためには、なるべく「すぐに行く」ことが重要ですね。
富永:夫婦経営のお店は、そのご夫婦の関係性を眺めているだけでも楽しいです。以前通っていたお店では、寡黙なご主人と息子さんが厨房で、おしゃべりな奥様が運んでくださっていたのですが、奥様のトークに男性ふたりがときどきボソッとツッコミを入れていて、それがクスっと笑える内容ばかりで。そんな温かい雰囲気が、たまらなく好きでした。
本郷:居心地がいいと言えば、もうひとつ、ひとり飯の店選びの際に確認すべきポイントがあります。それは「椅子の座りやすさ」! 僕はお酒を飲むので、ゆっくりと滞在することが多いから、座面が硬かったり、背もたれがなかったりすると、しんどくなってくる。振り返ってみると「あの店にまた行きたいな」って思う店って、椅子の座り心地がいいんです。脊髄が記憶しているのかも(笑)。
今回も、本郷さんに「ひとり飯」しやすいお店を紹介してもらいました!
東京・麻布十番にある日本料理のお店「とらくまもぐら」さん。本郷さんいわく「上等な居酒屋という雰囲気なのに入りやすい」お店で、もちろんご夫婦で経営されています。 「地下への扉を2回開けるので、隠れ家っぽさがあります。でも、店内に入るとすぐに、落ち着いた雰囲気のご夫婦が厨房から、笑顔で迎えてくださいます。サービス担当は日によって違うそうですが、僕が行ったときは美しい素敵な女性が料理を運んでくれました」と本郷さん。
まずはビールで、汲み上げ豆腐とポテトサラダを。その後、冷酒を飲みながら、刺身やのどぐろの塩焼き。これからの季節(夏)は、ごまアジが美味。そして締めにミニ肉じゃがカレーというのが、本郷さんオススメのひとり飯メニューだそうです。お肉料理のメニューも豊富。
カウンターに座って、ご夫婦が一緒に料理をする様を眺めながら、おいしい家庭料理を笑顔で味わう……そんな大人の男性って素敵です。今宵もひとり飯、いかがですか?
「とらくまもぐら」問:03-5441-2511(予約専用)
住:東京都港区麻布十番2-12-7 ラポール麻布十番B1
営:平日18:00~2:30(L.O.)土曜日・祝祭日18:00~23:00(L.O.)
休:日曜
www.kumamogura.jp/ 取材・文/富永明子
フリーライター。レシピ本の企画・編集、グルメ記事の執筆など、食に関する仕事のほか、美容やヘルスケア、ダイエットに関する書籍・記事も多数。趣味はクラシックバレエ。
取材協力/本郷義浩
毎日放送プロデューサー。1964年、京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、88年毎日放送に入社。「真実の料理人シリーズ」「ラーメン覇王」「ビビビのB級グルメ覇王」「あまからアベニュー」「水野真紀の魔法のレストランR」など、多くのグルメ番組に携わる。番組関連で取材した飲食店はのべ1万軒、プライベートでの食べ歩きも1万軒以上。近年は、世界でただ一人の麻婆豆腐研究家を名乗り「麻婆十字団」を結成。著書に『うまい店の選び方 魔法のルール39』(KADOKAWA)、『自分をバージョンアップする 外食の教科書』(CCCメディアハウス)がある。
『自分をバージョンアップする 外食の教科書』
本郷義浩(CCCメディアハウス)
「外食」を通して世界を広げることが、仕事もプライベートも今より充実させ、自分をバージョンアップさせる! 本郷さん自身の経験をもとに「冒険的外食術」「リーダーとしての外食術」「モテる外食術」など、具体的な外食の方法を解説した一冊。