「ウェルネス&腕時計」特集 Vol.79
2021.07.31
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新ムーブメント搭載の「カラトラバ」で蘇る、パテック・ファンが知るべき深い歴史

名門と呼ばれる時計ブランドは一朝一夕にはならない。

時を刻み続ける時計と同様、止まることは許されず、独立系ブランドであれば世代交代は重要な節目だ。だがそれはエポックメイキング誕生の歴史的瞬間でもあるのだ。

最新ムーブメントを搭載した「カラトラバ」が蘇らせるパテックの歴史

1970年代、時代の変化の荒波にさらされていたスイス時計において、パテック フィリップのフィリップ・スターン(現名誉会長)はひとつの決断を下した。

それは台頭するクオーツに対し、新たな価値観を持った機械式自動巻きムーブメントを作ること。それも超薄型で、最小化したマイクロローターを地板の厚みに収めるという画期的な発想だった。

すべてに優先し、わずか半年という異例の開発スピードでこのキャリバー240を作り上げ、発表数年後、社長に就任したのである。

このムーブメントが名作と称される理由は、薄さと実用性を併せ持ち、軽快な装着感とデザインの自由度を増すばかりか機能の拡張性にも優れていたことだ。

その実力は’84年に登場した永久カレンダーモデルに搭載され、明らかになる。ベーシックとコンプリをつなぐ。フィリップにはその計画が当初からあったのだ。

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[カラトラバ 6119]K18ローズゴールドケース、39mm径、手巻き。339万9000円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン 03-3255-8109)

最新ムーブメントを搭載した「カラトラバ」はそんな歴史を蘇らせる。

新開発のムーブメントは、ふたつの香箱を並列に配置し、厚みを抑えつつ、約65時間のパワーリザーブを実現した。しかも独自の設計により、持続時間以上に駆動トルクを重視し、歩度を安定させる。

そして2万8800振動のハイビート化によって精度を向上し、現代的な用途に応えた手巻きムーブメントを完成させたのだ。

初代「カラトラバ」は、1932年に「96モデル」として発表された。その存在は時代を超越し、ブランドを超えた時計の金字塔でもある。新作がモチーフにしたクルー・ド・パリ仕上げのベゼルは1934年に初出し、本作で2年ぶりに復活。

これを得た「カラトラバ」は、ダイヤルのレイアウトも美しく調和し、付加機能への可能性も示唆する。

その将来に向けての設計図は、開発を指揮し、現在社長を務めるティエリー・スターンにはもちろん描けていることだろう。

 

※本文中における素材の略称:K18=18金

作木正之介=写真 柴田 充、髙村将司、オオサワ系、まつあみ 靖、戸叶庸之=文

# パテック フィリップ# カラトラバ# 腕時計
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