この春、オンラインで開催された時計の祭典「ウォッチズ&ワンダーズ 2021」では、華やかな新作の発表以外にも最新技術やトレンド、ビジネスといった時計に関わるさまざまなテーマでパネルディスカッションが開催された。
それは合同イベントそのものの進化を印象づけるとともに、テーマのひとつに、環境保全に対するブランドの社会的責任について取り上げ、時計産業においてもこの問題が大きな課題であることを明確にした。
IWCが発表した「ティンバーテックス・ストラップ」もそうした時代の要請に応えるものだ。
従来のレザーに代わる紙素材を採用し、その80%が天然の植物繊維でできている。Forest Stewardship Council(FSC:森林管理協議会)の認証を受けたトレーサビリティ(流通)可能なヨーロッパの木材からセルロースを抽出し、伝統的な製紙技術によってイタリアで製造され、着色にも植物由来の染料が使われる。
60以上の製造工程があり、快適性を高めるために再生マイクロファイバーを詰め、再生糸を用いて専門職人の手で仕上げを施す。上質な見た目と柔らかくしなやかな質感を両立し、従来と比べても遜色ないばかりか、高い耐久性と防水性も備えるのだ。
IWCのような質実剛健なイメージのブランドが舵を切ったのも時代の趨勢かもしれない。しかしかつてライン川を利用した水力発電によって創業したブランドの歴史を振り返れば、こうした自然への慈しみと共生に意外性はない。
TAKAY、竹内裕二(BALLPARK)=写真 熊谷隆志、梶 雄太=スタイリング 池上 豪(NICOLASHKA)、飯嶋恵太(Mod’s Hair) =ヘアメイク 柴田 充、髙村将司、オオサワ系、まつあみ 靖、戸叶庸之=文