Watchの群像劇 Vol.33
2020.12.07
WATCH

スケルトンのカルティエ「パシャ」降臨。精緻な機構は“美”へと昇華された

「腕時計と男の物語」とは……

早朝の街は、既に晩秋の空気に満ちていた。いつもと違うあの夏以来、日課になったランニングもすっかり新しい日常になった。

最初はただがむしゃらに走り、数kmでバテていたものが、やがて自分のペースを掴めるようになった。コンディションを測る目安にしたのが、川沿いのコースにかかる橋だったのだ。

1つ目のグリーンの橋は、走り始めの清々しさを映すようだ。次に現れるのは、鮮やかな赤い橋。心拍数は上がり始め、弱音を吐きそうになる気持ちにエールを送ってくれる。ようやく走りに身体が慣れ、ペースも上がってくる。3つ目の青い橋を飾るカエルのレリーフに笑みがこぼれる。

そんな個性豊かな橋を走り過ぎるたび、なんだかそれが人生の節目のようにも思えてくる。

終わりのない夏を信じた学生時代、大切な人との出会い、挫折と達成感を知った仕事。甦ってくる過去に、過ぎ去った橋をもし渡っていたらと思う。向こう岸にはまったく違う風景が広がっていただろう。そして今とは違う人生があったに違いない。ふと対岸を並行して走っているランナーがもうひとりの自分のように感じた。今にもこちらを向いて手を振ってきそうだ。

普段意識せず往来する橋も実は高度な力学の結晶だ。荷重に応じた構造設計に、最適な材料を用い、必要とされる機能を純化し、装飾を極力削ぎ落とす。先進性や斬新さを競うようなビルにはない、その潔さに美しさが宿り、しなやかな剛性と堅牢を秘めながらも自由に風が通り過ぎる。

精緻な機構を “美” へと昇華するカルティエ「パシャ」のスケルトンウォッチ
腕時計267万6000円/カルティエ 0120-301-757、ニット3万1000円/チルコロ 1901(トヨダトレーディング プレスルーム 03-5350-5567)

いつも愛用しているカルティエの「パシャ ドゥ カルティエ」もそんな軽やかな美しさを備えている。丸形のケースの中央に、インデックスを兼ねたブリッジが四角いレイルウェイミニッツトラックを浮かび上がらせる。対極の存在を調和させたスケルトンダイヤルだ。

機能を併せ持つオープンワークの奥には、精緻な自動巻きムーブメントが覗く。だがそれもまた美へと昇華し、目には見えない時の概念を可視化した時計の芸術性を讃えるのだ。

いつしか折り返し地点の橋が見えてきた。多くの人やクルマが行き交うアーチ橋だ。景観と一体化し、どっしりとした風格を漂わせながら、ただ静かにそこにある。そんな存在にどれだけ自分は近づけるだろうか。

だがまだまだ半分。これから本当のスパートが始まるのだ。

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男たちを虜にしてきた名作がスケルトンになって降臨

SSケース、41mm径、自動巻き。267万6000円/カルティエ 0120-301-757 © Cartier

CARTIER
カルティエ/パシャ ドゥ カルティエ

1985年に誕生したオリジナルモデルの大胆かつ繊細なデザインや、チェーンでつながれたプロテクターでリュウズをカバーする独自構造を継承しつつ、新たに着脱が自在なインターチェンジャブルブレスレットやプロテクター下のエングレービングサービスを加え、コンテンポラリーな魅力を増した。

そしてインデックスやミニッツトラックを象ったダイヤルのオープンワークは、スケルトンに機能美を添える。そこに漂うのは時を超越するエレガントな美学だ。

 

※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

「腕時計と男の物語」とは……
男には愛用の腕時計がある。最高の相棒として、その腕時計は男と同じ時間を刻んできた。楽しいときも、つらいときも、いかなるときも、だ。そんな男と腕時計が紡ぐ、とっておきの物語をここで。
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川田有二=写真 石川英治=スタイリング 勝間亮平=ヘアメイク 柴田 充=文

# カルティエ# Watchの群像劇# スケルトン# 腕時計
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