2020.10.04
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Gショックの品質試験の実験室に潜入したら、ヤリすぎでビビった件

驚異のタフネスで知られる腕時計の定番「Gショック(G-SHOCK)」。

「落としても壊れない」という一行の企画書から誕生したこのリストウォッチは開発当初、ビルの3階から時計のコアを落とすという実験を繰り返し、並々ならぬ試行錯誤の末に誕生した。

Gショックの開発者・伊部さんが会社に提出した企画書
Gショックの開発者・伊部さんが会社に提出した企画書。テーマ以外は空欄。この先の、涙なみだの物語も必読。

実際の耐久性はと言うと、アメリカの大型トラックに轢かれてもびくともせず、アイスホッケーのパックになってもへっちゃら。

先日、Gショックの生みの親である伊部菊雄さんを取材するためカシオの羽村技術センターを訪れたところ、帰り際にご本人から「品質保証実験室を覗いて行きませんか?」との提案が。突如訪れた社会科見学の機会、逃す手はない。

お言葉に甘えて実験室に潜入すると、そこでは目を疑う衝撃的な実験が繰り広げられていた……。

「Gショック開発秘話」編はコチラから
Gショック生みの親の「想い出モデル&普段使いモデル BEST 3」はコチラから
1行でまとめた「Gショックの未来予想図」はコチラから

Gショックを待ち受ける“修羅の道”

品質保証実験室の入口をくぐると、片面にはGショック誕生の軌跡から近年のモデルまでをなぞる資料がずらり。もう一方の壁面には「評価規格総数」と題した試験項目の紹介が。

その試験項目数はなんと、190項目!

発売前のGショックがこんなに多くの試験、否、“試練”を乗り越えていたとは。ただし、品質保証室の阿部さん曰く「これは試験の総数なので、モデルによって項目は異なります」とのことだ。

試験の種類は、Gショックらしさを感じる「外装耐久性規格」といったものから「耐薬品性規格」まで、実にさまざま。さっそく、実際に行われている試験を見せてもらった。

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試練其の一:水と泥の試練

「防水試験機」でテスト中のGショック。

Gショックは防水性の高さでも知られており、プールや海で外さずに遊んでいる人も多い。キャンプなどのアウトドア遊びで悪天候に見舞われても、Gショックなら故障の心配さえ頭をよぎることはないだろう。

実際、Gショックに課せられる耐水性の試練は、日常生活の水準を遥かに凌駕していた。

例えば「水中ボタン耐久試験機」。Gショックが誇るプロフェッショナルダイバーズウォッチ「フロッグマン」に適用される試験だ。

試験内容は、時計を水中に沈め、水の中でボタンを数千〜数万回押して不具合がないかを確かめるというもの。その横には砂漠での使用などを想定したマッドレジスト(防塵・防泥)構造の「マッドマン」などの耐泥モデルに行う「耐泥試験機」が併設されており、こちらは水中に細かい泥の粒子を混ぜて同様の実験をするのだとか。

こちらは「加圧式水中ボタン耐久試験機」。

この試練をクリアすると、次に待ち受けるのが「加圧式水中ボタン耐久試験機」。今度は水中ボタン耐久試験に水圧をプラスして、動作性を確認する。

「ダイバーズウォッチは人命に関わるアイテムなので、試験もISO(国際標準化機構)で厳しい国際規格が定められています。しかし、カシオでは規格よりもさらに過酷な環境を想定し、水圧をかけながらボタンを操作できる試験機を独自に開発し、厳しく品質を確認しています」。

実際に試験を終えて時計を見てみると、Gショックは何事もなかったかのように時間を刻んでいた。だが、まだまだ完成までの道のりは長い。

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試練其の二:静電気の試練

「静電気試験機」はその名のとおり、時計に静電気を放電させる試験だ。

「バチバチッ!」と電気を浴びせるテストも。

「冬場は人体に1万ボルトを超える電流が溜まることがあります。しかし、時計は精密機械なので、静電気は天敵なんです」。

物腰の柔らかい丁寧な説明とは裏腹に、実際に試験機を手に取ると「バチバチッ!」と音を立てながら、Gショックに容赦なく放電していく。

「静電気試験機」で行う連続放電は、我々が日常で体験する「パチッ」という単発のような放電ではなく、連続でバチバチと負荷をかけるため、精密機械にとってはかなり辛い試験なのだという。時計によっては、このような放電で表示時刻がリセットされてしまうこともあるのだとか。

「この試験機がなかったときは、人が実際にセーターを脱ぎ着を繰り返してたんですよ」。

過去にはそんなアナログな実験が行われていたとは。心のなかで、当時の試験官をソッと労い、次の試練へ向かう。

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試練其の三:遠心力の試練

お次は「遠心力試験機」。

こちらは、専用のターンテーブルの端に時計を設置してテーブルを回転させることで遠心力をかけ、耐衝撃、耐遠心重力、耐振動性能の三拍子を兼ね備えたトリプルGレジスト対応のパイロットウォッチ「グラビティマスター」に行う試験である。

「遠心力試験機」では、人間なら生きていられないほどの遠心負荷にかけられる。

「F1ドライバーの走行中にかかる重力は5G、航空機用機器に求められる最も厳しい加速度の等級は15Gです。これは安全装置やクラッシュレコーダーに対して適用されるレベルですが、この試験機ではさらにその数倍の加速度を時計に発生させています。人間であれば命を落とすレベルの遠心負荷になっています」。

時計に遠心力がかかると、針が引っ張られて時間や針そのものの位置にずれが生じることがあるという。飛行士など、多くの人命を背負うプロにとっても、時計の果たす責任は大きく、Gショックではさらなるタフネスを日々追求しているという。

そして、試練はいよいよ最終関門へと到着する。

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最終試練:落下の試練

最後は現実的で、Gショックのルーツと言える落下衝撃の試験だ。

この実験室では、伊部さんが開発当初に3階から落としていた頃とは比べ物にならないような試験が行われていた。

目にも留まらぬ速さでGショックを落下させる「加速式落下試験機」。

非道な面持ちで佇むこのマシンは、「加速式落下試験機」と呼ばれるものだ。時計をセットする場所にバネが装備されており、最上段まであげたところでバネを反発させ、猛スピードで時計を地面に叩きつける。

しかも、落下の先にはコンクリートブロックを設置。安全性を追求するGショックに慈悲など存在しない。

そして、警報音とともに時計が目では追えないほどの猛スピードで落下。

これにはさすがに耐えられないかと思ったが……時計を拾ってみると、こちらも同じく一切の故障なく稼働していた。

これぞ、「G」の文字を冠するGショッククオリティ。驚異の耐久性が証明された瞬間だった。

 

実験を終えて

あまりの激しさに驚きの連続だったGショックの品質保証実験室。

今回は比較的に派手な試験を中心にご紹介いただいたが、このほかにも人工汗に時計を長時間浸す試験や、シャツ生地に幾度となく擦り付ける試験など、実生活を想定した試験も多数実施しているという。

「平均すると1モデルにつき、各コンセプトにあわせて100項目前後の試験を試作段階で行っており、すべての試験をクリアして初めて工場で量産することができます。なので、市販されているGショックは、こうした試験の数々を潜り抜けたエリートたちなんです」。

品質保証実験室の阿部さんは、壊れず作動し続けるGショックを片手に誇らしげに語る。

「こうした試験を考えたり、定量的に評価を行えるように試験機を開発するのも品質保証実験室の役割のひとつです。試験項目は、直近の4年で30項目ほど増えています。カシオは部品の小型化はもちろん、常に新しい技術を開発しているので、それに応じて試験も日々進歩しているんです」。

「創造貢献」「品質高揚」。これは、Gショックを展開するカシオが掲げる社訓である。社会をよりよくするための新技術の開発はもちろん、ユーザーに安心して、継続的に使用してもらうための努力も惜しまない。

品質保証実験室では今日も、開発途中のGショックたちが過酷な試験を乗り越えている。

市川明治=取材・文

# カシオ# G-SHOCK# Gショック# 時計
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