「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……そもそもの話になるが、ヴィンテージウォッチの相場は、時計の良し悪しだけで成り立つものでない。
価格はあくまで需要と供給のバランスから決まるため、ときにブランドが持つ人気や知名度が、市場での評価に繋がることも多い。
その一方で、有名なブランドでなくても評価されているモデルも多くある。
そんな、ミリタリーウォッチ界の“知る人ぞ知る名品”を紹介しよう。
■ブローバ アメリカ陸軍航空軍 タイプA-15
ブローバの「タイプA-15」は、ほぼ市場に出回ることがない “幻のミリタリーウォッチ”の1本に数えられる。
オリジナルは約500本製造され、1940年代初頭から中頃にかけて、アメリカ陸軍航空軍(USAAF)の航空技術サービス司令部をはじめとして、さまざまな機関でテストが行われたのだが、正式採用には至らなかった。
このような事情から流通が極端に少ないことに加え、時間経過を瞬時に読み取る特殊機能を実現した唯一無二のデザインを持ち合わせていることが、プレミア化の主な理由だ。
採用した“リムアキュムレーター”というシステムは、2時位置と4時位置のリュウズを回すことで、2つの回転ベゼルを操作し、分・時の経過をそれぞれ読み取ることができる。
復刻モデルも人気らしいが、貴重なオリジナルが放つ存在感は、やはり別格だ。
■アウリコスト フランス空軍 タイプ20
フランス空軍用のクロノグラフ「タイプ20」は、ブレゲ、ヴィクサ、エイラン、そしてアウリコストの4社が納入していたことが確認されている。
アウリコストが手掛けた「タイプ20」は、メッキケース×マットブラックダイヤルと、ステンレススチールケース×ブラックミラーダイヤルの2種類があり、こちらで紹介する後者のモデルは、わずか100~200本ほどの製造数だと言われている。
なお、この個体は、裏蓋に「CEV(フランス空軍飛行テストセンター支給)」の刻印が入ることから、通常のステンレスケース・モデルよりもさらに稀少性が高い。
厳格な品質基準を設けた軍用のクロノグラフだけあって、ムーブメントの性能は頭ひとつ抜けている。
レマニア製の「Cal.15TL」をベースムーブメントにフライバック機能を追加することで完成した「Cal.2040」は、耐震装置まで付くスペックが自慢。
稀少性、機能性ともにトップクラスだが、最大の魅力は、フランスブランドらしい“エスプリを感じさせるスタイリング”にあるとも言えないか。
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