ヴィンテージウォッチの年代別博物館。オリジナルとともに復刻作を追いかける
近年、多くのブランドが競うよう発売している復刻腕時計。そこで1930’s〜70’sにオリジナルが発表され、今年復刻版が誕生したモデルを集めてみた。
その多彩な顔ぶれはまるで時計博物館。さあ知的好奇心を全開に!
[1930’s]伝統の2カウンターに山岳探検の精神をプラス

MONTBLANC
モンブラン/モンブラン 1858 オートマティック クロノグラフ
左右にスモールセコンドと30分積算計を備えた2カウンタークロノグラフは、1930年代に生まれたミネルバのモノプッシャー クロノグラフをモチーフにしている。
特徴的なコブラ針や数字インデックスをなぞり、ベゼルのセラミックスリングには4つの基本方位をエングレービングし、山岳探検で培われたミネルバのスピリットを加えた。精悍なブルーは、過去にとどまらずさらに前進を続ける意志の表れだ。
[1940’s]海の男たちに支持されたミリタリーの機能美

LONGINES
ロンジン/ロンジン ヘリテージミリタリー
ロンジンの歴史は常に冒険や探検のサポートとともにあり、そこで培われた精度や信頼性はミリタリーの分野でも高く評価された。1947年にフランス海軍向けに製作されたモデルもそのひとつであり、これを現代にリバイバル。
ドーム型風防に覆われたシンプルな3針に、ゴールドオパーリンカラーのダイヤルと旧ロゴを採用する。針の夜光はオリジナルの劣化したカラーも再現し、マニア心をくすぐる。
[1950’s]パイロットの歴史に刻まれたクロノグラフを忠実に再現

BREITLING
ブライトリング/AVI REF. 765 1953 リ・エディション
ブランドの歴史と価値を再発見するリ・エディションの第2弾は、1953年のパイロットウォッチがモチーフ。「コ・パイロット」の名で知られるシリーズの初期バージョンで、デザインは1930〜’40年代のオンボードクロックに由来する。
手巻き式やケースサイズまでもオリジナルから変えず、防水性能や夜の視認性など実用性は向上している。時を超えて色褪せたようなインデックスのカラーリングも味わい深い。
[1960’s]名作クロノの復刻でブランドの160周年を祝す

TAG HEUER
タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー カレラ 160周年 シルバー ダイヤル リミテッドエディション
創業160周年を祝福するのが本作であり、ブランドの顔である「ホイヤー カレラ」の復刻版。あえて初代の2カウンターではなく、3カウンターのシルバーダイヤルをチョイスしている。
ムーブメントは、手巻き式バルジュー72から最新の自社製ホイヤー02へと進化を遂げ、カウンター位置やケースサイズは変わったものの、モーターレースにかけた熱い情熱を継承する。当時採用されていた12時位置のホイヤーロゴにも注目だ。
[1960’s]さらにマニアックな斬新ブレスレットが復活

ZENITH
ゼニス/エル・プリメロ A384 リバイバル
ブランドの象徴であるエル・プリメロは昨年誕生50周年を迎え、記念すべき初代搭載モデルの「A384」が復刻された。これに加えて今年登場したのが、やはり当時開発されたラダーブレスを装備したモデル。
名門ブレスレットメーカーであるゲイ・フレアー社が手掛けたオープンデザインは、斬新な見た目に加え、軽量で快適な着け心地を実現した。スポーティにもかかわらず、ドレッシーさも薫る。
[1970’s]スペースエイジの先進性はさらに進化を遂げて

HAMILTON
ハミルトン/ハミルトンPSR
復刻が望まれるのは機械式だけではない。ハミルトンは世界初のLED式デジタルウォッチの誕生50周年を祝し、1973年に発表された名作「P2」を再現。
丸みを帯びたケースはオリジナルと同サイズで、液晶ディスプレイと有機ELテクノロジーを組み合わせた最新のハイブリッドディスプレイでエネルギー消費量を抑える。その革新性は今も色褪せない。
[1970’s]ユニークなダイヤルデザインを当時のままで

BULOVA
ブローバ/アーカイブス シリーズ クロノグラフA “サーフボード”
若者文化が台頭した1970年代、時計のデザインも大きく変化した。’70年から2年間生産された「クロノグラフA」もそのひとつ。
2カウンターを楕円で囲んだデザインから、サーフボードの愛称で親しまれたクロノグラフを復刻。洗練度を増し、小ぶりなサイズ感も良し。
[1970’s]時代を超越した機能美に秘められた物語

EDOX
エドックス/スカイダイバー ミリタリー リミテッドエディション
1973年にスイス軍が精鋭パラシュート部隊用に依頼し製造されたものの、極秘案件として埋もれていたエドックスのミリタリーダイバーズが初めてその封印を解いた。そんな物語とともに、陸海空のいかなる厳しい環境にも耐える仕様は、時代を超越した機能美を感じさせる。
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
柴田 充、髙村将司、増山直樹=文