「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……前回紹介したアメリカ軍とイギリス軍のミリタリーウォッチに施された“マーキング”。
時計の仕様を示すスペック、軍の管理コード、シリアル番号などを時計に記すことによって、各国の軍隊が時計の個体管理行っていたことから、今日では個体のオリジナリティを調べる判断材料のひとつとなっているのだ。
今回はドイツ、フランス軍の時計の紹介とともに、それぞれのマーキングを読み解いていこう。
1.厳格さが漂う「ドイツ軍」の表記
あらゆる意味で異彩を放つドイツ軍のミリタリーウォッチ。
第二次世界大戦では、多くの兵士たちに時計を支給するため、自国のブランド以外にも大量発注し、独自の文化が発展。戦後は西ドイツ軍がクロノグラフを中心に時計を調達した。
どの年代も変わらず、マーキングはシンプルで力強い表記で一貫されている。
■アルピナ ドイツ帝国海軍 KM 592通称「KM」とは、第二次世界大戦でドイツ帝国海軍が海軍一般兵用に調達した時計であり、アルピナ以外にもいくつかのメーカーが製造している。
ムーブメントの地板でムーブメント番号を照合することができる。文字盤には、必ず「KM」とムーブメント番号のプリントが記載。船内で視認性を確保するためにホワイトダイヤルを採用していることも特徴として挙がる。
ケースバックはシリアル番号のみが刻印されている。
■ホイヤー 西ドイツ空軍 BUND Type.1550 SG フライバッククロノグラフ1967年から西ドイツ軍の制式クロノグラフの製造を請け負ったホイヤー。
このモデルは「タイプ1550」と呼ばれ、時計単体、NATO革ベルト付き、ハンハルトのストップウオッチが付属という、3つのパターンで支給されていた。
高級機らしい洗練されたマーキング。こちらの個体は、時計単体の「1550 SG」の初期型。ケースバックの刻印は、「6645-12-146-3774」はNATOコード、「BUNDESWEHR」はドイツ連邦軍を意味する。
■チュチマ ミリタリークロノグラフ 西ドイツ空軍 BUND1985年に西ドイツ空軍の制式時計として採用されたチュチマのクロノグラフ。
同型の時計も市販されていたが、両者の相違点は、ケースバックのマーキングにある。軍に納入された時計には、ドイツ連邦軍の略式名「BUND」、NATOコード、シリアルナンバーが入る。
ドイツ軍用の刻印はいくつかのバリエーションが存在する。ちなみに、「US-Property」と刻印されたヨーロッパに駐屯するNATOアメリカ空軍用のモデルも存在する。
採用された自動巻きムーブメントは、軍が要求した諸条件をすべて満たすレマニア製の「Cal.5100」であったことも特筆すべき点。
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