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2.機知に富む「フランス軍」のマーキング

フランス軍の軍用時計が製造されるのは第二次世界大戦後から。最も有名なモデルは1950年代半ばに製造されたブレゲの「タイプ20」だと思われる。
マーキングは主に、所属する軍の情報や個体のシリアル番号で構成されている。
 
■ストーヴァ フランス陸軍 ブラックミラーDL タイプ2
1950年代、メッキ☓SSケース、33mm径、手巻き。10万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933
1954年に約2700本がフランス陸軍に納入されたと言われているストーヴァの時計。
アルファハンドの「タイプ1」とペンシルハンドの「タイプ2」がある。このモデルは後者で現存数はかなり少ないとの噂だ。

マーキングからは、フランス陸軍であることに加え、防水性や耐磁性を持つ時計であることが読み取れる。
フランス語で「ARMEE FRANCAISE(フランス陸軍)」と刻印が入るケースバックには、防水時計らしい力強さが感じられる。
 
■ロンジン フランス海軍 MN
「ロンジン フランス海軍 MN」 1940年代、SSケース、33mm径、手巻き。40万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933
市場にまず並ぶことがない第二次世界大戦後に、フランス海軍に納入されたロンジン製のミリタリーウォッチがある。
文字盤のブランドロゴ下には、フランス語でスイス製を表す「FAB. SUISSE」の表記があり、搭載されたムーブメントは名機「Cal.12.68N」。

ケースバッグには、海軍を示す「MN(Marine Nationale)」とシリアル番号が刻印。ケースバックの両面、ラグ裏のシリアル番号はすべて一致している。
 
■ブレゲ フランス空軍 タイプ20 フライバッククロノグラフ
1956年支給、SSケース、38mm径、手巻き。400万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933
フランス空軍に支給されたブレゲの「タイプ20」は、あらゆるミリタリーウォッチの頂点に立つコレクターズアイテム。製造数は少なく、2000本程度という記録が残っている。
こちらは文字盤にブランド名の表記がないタイプ。ムーブメントはフライバック機能を備えたバルジュー社の「Cal.222」を搭載。

マーキングの情報からさまざまな記録に辿り着くことができる。
この個体では、1954年に製造され、数年ごとにメンテナンスされながら、1978年までフランス軍の管理下で使用されていたことが確認できる。メンテナンス記録が打刻されるのはフランス軍のみ。
 
前回と今回、2回にわたり紹介したマーキングはごく一部の例に過ぎない。
ミリタリーウォッチの歴史に触れながら、それがオリジナルであることを判断するための重要なディテールとして知っておけば、深淵なミリタリーウォッチ世界の“裏も表も”楽しめるようになるはずだ。

[取材協力]
キュリオスキュリオ
住所:東京都港区南青山4-26-7 +8ビル 302
電話:03-6712-6933
営業:15:00~20:00 月・火曜定休
https://curious-curio.jp
 
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※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
戸叶庸之=編集・文


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