2.機知に富む「フランス軍」のマーキング
フランス軍の軍用時計が製造されるのは第二次世界大戦後から。最も有名なモデルは1950年代半ばに製造されたブレゲの「タイプ20」だと思われる。
マーキングは主に、所属する軍の情報や個体のシリアル番号で構成されている。
■ストーヴァ フランス陸軍 ブラックミラーDL タイプ21954年に約2700本がフランス陸軍に納入されたと言われているストーヴァの時計。
アルファハンドの「タイプ1」とペンシルハンドの「タイプ2」がある。このモデルは後者で現存数はかなり少ないとの噂だ。
マーキングからは、フランス陸軍であることに加え、防水性や耐磁性を持つ時計であることが読み取れる。
フランス語で「ARMEE FRANCAISE(フランス陸軍)」と刻印が入るケースバックには、防水時計らしい力強さが感じられる。
■ロンジン フランス海軍 MN市場にまず並ぶことがない第二次世界大戦後に、フランス海軍に納入されたロンジン製のミリタリーウォッチがある。
文字盤のブランドロゴ下には、フランス語でスイス製を表す「FAB. SUISSE」の表記があり、搭載されたムーブメントは名機「Cal.12.68N」。
ケースバッグには、海軍を示す「MN(Marine Nationale)」とシリアル番号が刻印。ケースバックの両面、ラグ裏のシリアル番号はすべて一致している。
■ブレゲ フランス空軍 タイプ20 フライバッククロノグラフフランス空軍に支給されたブレゲの「タイプ20」は、あらゆるミリタリーウォッチの頂点に立つコレクターズアイテム。製造数は少なく、2000本程度という記録が残っている。
こちらは文字盤にブランド名の表記がないタイプ。ムーブメントはフライバック機能を備えたバルジュー社の「Cal.222」を搭載。
マーキングの情報からさまざまな記録に辿り着くことができる。
この個体では、1954年に製造され、数年ごとにメンテナンスされながら、1978年までフランス軍の管理下で使用されていたことが確認できる。メンテナンス記録が打刻されるのはフランス軍のみ。
前回と今回、2回にわたり紹介したマーキングはごく一部の例に過ぎない。
ミリタリーウォッチの歴史に触れながら、それがオリジナルであることを判断するための重要なディテールとして知っておけば、深淵なミリタリーウォッチ世界の“裏も表も”楽しめるようになるはずだ。
[取材協力]キュリオスキュリオ住所:東京都港区南青山4-26-7 +8ビル 302電話:03-6712-6933営業:15:00~20:00 月・火曜定休https://curious-curio.jp 「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……軍用を出自とするミリタリーウォッチは、国や時代、用途などによって驚くほど奥が深い。そんな一朝一夕には語れない世界に飛び込む“新兵”へ向けた短期集中訓練(ブートキャンプ)。
上に戻る ※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
戸叶庸之=編集・文