ミリタリーウォッチ ブートキャンプ Vol.7
2020.08.12
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失敗しないヴィンテージ・ミリタリー時計入門ガイド、絶対押さえたいポイントは?

「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……

ミリタリーウォッチの本質に触れたいなら、まずはヴィンテージを選んでみるのも悪くない。

精度や機能に限って言えば今の時計よりも劣るし、多少デリケートに扱う必要がある。だが、ヴィンテージのミリタリーウォッチには、それを補って余る魅力がある。

では、幅広い選択がある中で何を選べば失敗しないのか。「サイズ」「オリジナル」「リセール」という3つのポイントを立て、ヴィンテージウォッチ専門店・キュリオス キュリオの萩原秀樹さんに教えてもらった。

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①まずはサイズを見極める! 基準は40mm径

近頃、高級時計の世界では“小径モデルの新顔”を見かける機会が徐々に増えている。このトレンドに、40mm径以下のものが多いヴィンテージのミリタリーウォッチはハマりやすい。

「主流のサイズである“34~36mm径”をひとつの基準にすると、全体の傾向を掴みやすくなると思います。

第二次世界大戦でイギリス陸軍が使用した通称「ダーティ・ダース」と呼ばれるシリーズ。
第二次世界大戦でイギリス陸軍が使用した通称「ダーティ・ダース」と呼ばれるシリーズ。12の時計メーカーが納入していたため、バリエーションが豊富にある。35〜38mm径のサイズも人気の理由。

不動の人気を誇るのが、38mm径前後のクロノグラフ。着用しやすいうえに優れたデザインが多いため、まさに鉄板なんですよね。防水ケースであれば、なお良し(笑)。

1950年代から70年代初期まで、イギリス海軍(0552)、空軍(6BB)で使用されていたレマニアのワンプッシュクロノグラフ。
1950年代から70年代初期まで、イギリス海軍(0552)、空軍(6BB)で使用されていたレマニアのワンプッシュクロノグラフ。ケース径37.5mmという絶妙なサイズに加え、洗練されたデザインを併せ持つ。

このほかだと、第二次世界大戦でアメリカ陸軍航空隊が採用していた「タイプA-11」のように、今の時計よりも極端に小さなサイズとか……。選択肢がかなり狭まりますが、40mm径オーバーの時計も見つかりますよ。

第二次世界大戦中にアメリカ陸軍航空隊が採用した「タイプA-11」は、ファッション業界関係者にも愛用者が多い。
第二次世界大戦中にアメリカ陸軍航空隊が採用した「タイプA-11」は、ファッション業界関係者にも愛用者が多い。今の時代の機械式時計ではまず見られない31mm径のケースサイズに注目!

国や軍、時代によって、サイズは異なりますが、いずれにしても今の時計よりも小ぶりであることに違いはありません」(萩原さん ※以下カッコ内はすべて)。

40mm径以下でも豊富にある選択肢。これをひとつの基準にお宝探しをするのが第一歩だ。

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②どこまでオリジナル? こだわるべきパーツ解説 

「オリジナル(※コピーや復刻ではないオリジンということ)の判断が難しいと言う理由から、ヴィンテージウォッチを敬遠する方もいると思いますが、その気持ちはわかります(笑)」。

萩原さんも言うように、ヴィンテージウォッチを購入するうえでの第一関門がココになるのだが、これは初心者に限らず、識者にとっても厄介な問題である。

「でも、ミリタリーウォッチに関して言えば、マーケットが成熟していることから情報が入手しやすいため、オリジナルや真贋は見極めやすい方ほうだと思います。

基本的に軍用時計のケースバックには、国、年代、軍隊、仕様などが分かる“マーキング”が入る。
基本的に軍用時計のケースバックには、国、年代、軍隊、仕様などが分かる“マーキング”が入る。ストラップを接続するパーツは、バネ棒ではなく、嵌め殺しであることが多い。

専門店に聞くのがいちばん手っ取り早いと思いますが、ある程度の経験やコツを掴めば、ネット上で時計を見比べることで判断できるようになれるかもしれません。

ただ、情報を何でも鵜呑みにしてしまうのは危険なので、“質を見極める眼”が必要になりますね」。

では、どんなポイントを重点的にチェックするべきなのか?

「一部の例外を除くと、ミリタリーウォッチにはブレスレットを装着しているモデルがほぼありません。ですから、プラスチック製の風防と同じで、消耗品であるストラップが社外品に交換されていてもマイナスにはならない。

同じ消耗品でも話がリュウズになるとそうもいきません。時計の一部としてデザインされているパーツだから、これが欠けてしまうと時計全体の印象が大きく変わります。

コンディションも入念にチェックしたい。特に文字盤は個体の評価を大きく左右するため、見逃しは厳禁だ。
コンディションも入念にチェックしたい。特に文字盤は個体の評価を大きく左右するため、見逃しは厳禁だ。こちらの1960年代頃のユンハンスの西ドイツ空軍用クロノグラフは素晴らしい状態を維持している。

クロノグラフのプッシュボタンなどもそうですが、この辺りのパーツは後から入手することがとても難しい。購入する時点で可能な限りこだわりたいですね」。

なるほど。基本的なルールを知れば知るほど、ぼやけていた視界がクリアになりそうだ。

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③リセール価値も見据えた個体選び。具体的に3本選抜

この数年、天井知らずの高騰が続いたヴィンテージウォッチだが、ここのところ、だいぶ落ち着きを見せていて、市場価格は横ばいの傾向にある。

「ほかのヴィンテージウォッチと比べると、ミリタリーウォッチは比較的安価で手に入れられる個体が多いのも魅力です。オークションの競売などの影響をそこまで受けないので、価格が乱高下もせず、緩やかに上昇する傾向が何年も続いています」。

参考までに萩原さんが価格別にセレクトしてくれた一押しの3本紹介しよう。

▪️ハミルトン イギリス陸軍 W10 トノーケース

先日、復刻モデルが出たことで話題のイギリス陸軍に採用されたハミルトンのトノーケース。
「ハミルトン イギリス陸軍 W10 トノーケース」 1973年製、SSケース、35.5mm径、手巻き。8万8000円[税込]/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

先日、復刻モデルが出たことで話題のイギリス陸軍に採用されたハミルトンのトノーケース。こちらはイギリス陸軍に採用された時計。

裏蓋には、それを示す「W10」の刻印がある。ワンピース構造のケースと防水構造の風防ゆえ、気兼ねなく着用できる。

 

▪️ミネルバ ドイツ陸軍 DH ブラックミラーダイヤル

第二次第二次世界大戦時にドイツ陸軍に納入された通称「DH」と呼ばれるミネルバの時計。
「ミネルバ ドイツ陸軍 DH ブラックミラーダイアル」 1940年代、メッキ+SSケース、34mm径、手巻き。18万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

第二次世界大戦時にドイツ陸軍に納入された通称「DH」と呼ばれるミネルバの時計。「DH」とは「Deutsche Heer」の略で、「Deutsche」は制式時計、「Heer」は陸軍を意味する。

ミラー仕上げの文字盤と真鍮にクロムメッキを施したケース(裏蓋はステンレス製)を採用。

 

▪️ベンラス アメリカ軍特殊部隊 タイプⅠクラスA MIL-W-50717

1970年代にアメリカ海軍、特殊部隊で使用されたベンラスの「タイプⅠ クラスA」は、ブランドやモデル名が一切入らない超ストイックな面構えの文字盤が人気。
「ベンラス アメリカ軍特殊部隊 タイプⅠクラスA MIL-W-50717」 1974年製、SSケース、39mm径、自動巻き。50万円前後(実勢価格)/キュリオスキュリオ 03-6712-6933

1970年代にアメリカ海軍、特殊部隊で使用されたベンラスの「タイプⅠ クラスA」は、文字盤にブランドやモデル名が一切入らない超ストイックな面構えの文字盤が人気。

ヴィンテージの軍用時計ではかなり大きな部類に入るケースをはじめ、何もかもがタフで骨太な1本だ。

 

いずれのモデルもシンプルでありながら、堪え難いミリタリーウォッチ特有の魅力が感じられる。

「リセールを考えるなら、オリジナリティとコンディションにこだわることは絶対条件ですね。うちの場合だと、条件が整った個体であることを前提になりますが、購入価格の80%から買い取りを受け付けています」。

すなわち、価格を問わず、良質な個体を選ぶことは、リスクヘッジにも繋がるわけだ。

「古きを訪ねて、新しきを知る」という言葉のように、本物のヴィテージウォッチとの貴重な出合いは、新しい世界の扉を開いてくれるはずだ。

ヴィンテージウォッチ専門店・キュリオス キュリオ

[取材協力]
キュリオスキュリオ

住所:東京都港区南青山4-26-7 +8ビル 302
電話:03-6712-6933
営業:15:00~20:00 月・火曜定休
https://curious-curio.jp

「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……
軍用を出自とするミリタリーウォッチは、国や時代、用途などによって驚くほど奥が深い。そんな一朝一夕には語れない世界に飛び込む“新兵”へ向けた短期集中訓練(ブートキャンプ)。   上に戻る

※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール

戸叶庸之=編集・文

# ヴィンテージ# ミリタリーウォッチ# 腕時計
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