パテック フィリップの限定モデル「6007A」が見据えるカラトラバの未来
2020年初頭に竣工した新工場の門出を祝い、パテック フィリップは新作「Ref.6007A」を発表した。カラトラバの歴史にその名を刻むことになる記念モデルは、瑞々しさに溢れている。
2015年10月に始まったジュネーブ郊外のプラン・レ・ワット新工場建設は、パテック フィリップ社長、ティエリー・スターンの指揮のもと、本社工場拡張による製造拠点の確保を目的に発足した大規模なプロジェクトだった。

パテック フィリップは節目ごとに記念モデルを発表するのが恒例だが、未来を託された新工場「PP6」へのトリビュートとして誕生した「Ref.6007A」は、その意味からも極めて特別なタイムピースのひとつに数えられそうだ。
カラトラバが“究極の定番”であり続ける理由
ここで改めてカラトラバのルーツに触れてみたいと思う。
カラトラバ・スタイルの誕生は、パテック フィリップのみならず、今日の腕時計の歴史を語るうえでも欠かせない出来事だった。
1932年、経済面で危機に瀕していたパテック フィリップは経営権をスターン兄弟に譲渡。彼らは困難を打破するために、懐中時計から腕時計に舵を切る決断を下し、同年に開発された記念すべきモデルが「Ref.96」であった。

“少ないほど豊か”“機能がフォルムを決定する”という芸術・建築学の運動バウハウスにインスピレーションを受けて創作された「Ref.96」は、1970年代まで販売されたロングセラーであり、度重なるチャレンジの結果、数え切れないほど多くのバリエーションを残した。
進化が紡ぐカラトラバの伝統は、現代まで脈々と受け継がれている。
未来を見据えたステンレス製の限定モデル「6007A」

伝統を守ることの難しさを誰より知るからこそ、パテック フィリップの時計は革新に溢れている。
最も“純粋なパテック フィリップ”であり、ブランドの歴史そのものであるカラトラバの創作は、常に困難を極めるという。
未来を見つめて、どんな犠牲も厭わない。あらゆる困難を乗り越えたデザインはいかなるときも美しい。つまるところ、カラトラバ・スタイルの真髄はそこにある。
その点からも「Ref.6007A」は純然たるカラトラバなのだと思う。

これから訪れるテクノロジーの世界を表現したという文字盤は、2017年に現行コレクションの仲間入りを果たした「Ref.6006」を彷彿させるデザインに、大胆なアレンジを施している。

愛好家たちに大きなインパクトをもたらしたのが、ステンレス製のケースを選んだことに尽きる。これはパテック フィリップのメンズではとても珍しく、予想を裏切り、期待に応えるとは、このようなことを指すのだと思わされる。
ひと目では織物にしか見えない、カーフスキンストラップの仕上がりにも驚く。そこに妥協は一切見当たらない。

どこを切り取っても見どころ満載の限定モデル「Ref.6007A」。幸運にも1000人のオーナーズリストの中に名を連ねることができれば、世界中から羨望の眼差しを集めるに違いない。
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パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
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戸叶庸之=文