郷愁だけで終わらない金の復刻時計が持つ、進化に伴う新たな価値
ファッションの世界では、レトロスタイルが今や定番のひとつに。
そこには時代ごとのユニークさや斬新な発想があり、ノスタルジックな魅力だけではけっしてない。手にすることでその時代を感じることができるだろう。
なかでもギラついたイエローゴールドの復刻時計は今見てもエッジィなストリート感に溢れている。スタイリッシュなアクセサリーのように身につけたい代物だ。
これは価値観の復刻である

GUCCI(グッチ)/グリップ
グッチのクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレは、熱狂的なアンティーク愛好家としても知られる。
これまで手掛けてきた時計も、名作と呼ばれる時計や王道のスタイルへのオマージュを強く感じさせ、その普遍性をベースに時代感や自身のクリエイティビティを存分に注ぎ、オリジナリティへと昇華させている。
それは純然たる復刻ではないが、時計マニアも唸らせる歴代へのリスペクトとアレンジ、そしてブランドの世界観と一体化したファッション性を併せ持つのだ。
このグリップは、1990年代のスケートボードカルチャーをテーマに、モデル名もボードに貼り付けるグリップテープから付けられた。
文字盤全面を覆い、3つの小窓で時間、分、日付を表示するスタイルは、“鉄仮面”と呼ばれるジャンピングアワーのヴィンテージウォッチや、’70年代に百花繚乱となったレトロフューチャーなデジタルウォッチを彷彿させる。そんなタイムレスな魅力も極めて現代的な復刻といえるだろう。
今なお、フューチャリスティック

BULOVA(ブローバ)/コンピュートロン
1950年代半ばから台頭した若者文化は、’60年代末から’70年代にかけて本格的なカウンターカルチャーとして花開いた。
当時のヒッピームーブメントや音楽、アートと結びつき、ファッションも従来の概念から開放され、より自由になった。こうした変革期を迎えたのは時計も例外ではない。
’70年代にはクオーツが登場し、従来の機械式を席巻し始める。こうした電子化によって機構ばかりでなく、発光ダイオード(LED) を用いたデジタル表示も誕生。文字盤から針がなくなることでデザインや機能の自由度が増し、ファッション性も増したのだ。

そんな時代を象徴するのが1976年に発表されたコンピュートロンだ。
これを復刻し、台形のケースは手前の側面に時刻表示のディスプレイを備え、リュウズを押すと時分に次ぎ、プッシュ毎に秒や月日、曜日、第二時間帯が表示される。
スマートウォッチが登場した現代でもそのスタイルは近未来のアヴァンギャルドを感じさせる。
Gショック、25年目の初物

CASIO(カシオ)/GM-6900G-9JF
1983年の誕生以来Gショックはタフネスを追求し、時計の既成概念を覆したスタイルは世界中の若者に支持され、いつの時代もファッションと結びついてきた。
なかでも人気の高い6900シリーズは、Gショック初のフロントボタンを備えた丸型ケースに、3つのインジケーターが並ぶユニークなレイアウトは“三つ目”の愛称で親しまれている。
当時スラッシャー系にも大人気となり、ストリートカルチャーのシンボルにもなったほどだ。その独創性は今も際立つ。
今年は誕生25周年を迎え、初のメタルベゼルが登場した。ケースを覆うメタルベゼルは、凹凸の多い複雑なフォルムを再現するため、約20の鍛造工程に切削と研磨を繰り返している。
そしてラグジュアリーなゴールドカラーに、ブラックで統一したディスプレイやラバーストラップが精悍さを演出する。
大人になっても持ち続ける反骨心を、改めて実感するにも最適だ。
「豊作、復刻時計」とは……
2020年は、さまざまなブランドから復刻時計が大豊作。我々が生まれる前に作られたヘリテージモデルから、懐かしい’90年代のあのモデルまで、見た目も気分も昔に巻き戻してくれそうな良質復刻時計をご紹介。上に戻る
柴田 充=文