時器放談●マスターピースとされる名作時計の数々。そこから6本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。「ラグジュアリーブランド編」となる今回の5本目は、エルメスの「スリム ドゥ エルメス」。
安藤 エルメスの時計の歴史ってけっこう古いんですよね?
広田 そうですね。比較的古い。確か20世紀初頭には扱い始めているはずです。初期のころにはジャガー・ルクルトなどと一緒に時計を作ったり。1978年には「ラ・モントル・エルメス(現・エルメス・オルロジェ)」って時計の子会社を設立しています。
安藤 以前は女性向けの時計のイメージが強かったんですが、最近はメンズが良いですよね。この「スリム ドゥ エルメス ルゥール・アンパシアント」は、見た目からして「これぞエルメス」というか、上品なのに少しの可愛らしさがある感じ、けっこう好きです。
ラグジュアリーブランドのスゴい時計【5】エルメス「スリム ドゥ エルメス ルゥール・アンパシアント」 広田 素敵! 超お上品! エルメスワールド全開です。
安藤 単に上品なだけに止まらず、モダンさを感じるのは、やっぱりこのアラビア数字のフォントのせいでしょうか。現代フランスを代表するグラフィックデザイナー、フィリップ・アペロワが、エルメスのためにデザインしたんですよね。
広田 そうそう。んでもって、機械も面白いですよ。機能的には紳士のためのリマインダー時計というか。
安藤 リマインダー時計?
広田 はい。いわゆるアラーム時計ですけど、設定時間の1時間前になると7時位置にあるインジケーターの針がビューンと動き出して、その時が来たら自分にしか聞こえないくらい小さな音でチーンって鳴る。
安藤 ああ、だからリマインダー時計か。確かに普通のアラーム時計だと「ジリジリ」と誰もが気づくくらいの音が出ますもんね。でもこの時計の場合には密やかに鳴るというか、自分のためだけに鳴っている感じ。たとえ他の人に聞こえたとしても、嫌な感じは受けない音ですよね。会議のときとか、この機能使ってたら洒落てるなぁ。
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