時器放談 Vol.14
2019.12.29
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時計業界もビビったグッチ「グリップ」が示す、ブランド時計のあるべき姿

時器放談●マスターピースとされる名作時計の数々。そこから6本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。「ラグジュアリーブランド編」となる今回の4本目は、グッチの「グリップ」。

安藤夏樹(写真左)●1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリーマガジンの編集長を経て、現在はフリーに。「SIHH」や「バーゼルワールド」を毎年取材し、常に自分の買うべき時計を探す。口癖は「散財王に俺はなる!」。

安藤 グッチに関して言うと、2018年あたりから本当に面白い存在になりました。ブランド全体を取り仕切るクリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレの世界観が、とうとう時計にも浸透してきたな、って強く感じるようになったんですよね。

広田 2018年というと、安藤さん、ホログラムの「G-タイムレス」を推してましたよね。機能としては普通の2針のクオーツ時計なんだけど、文字盤とバンドにホログラムを施すことで、なんとも言えない不思議な存在感がありました。

ダイアルとストラップに施されたGGロゴのホログラムが特徴的な「G-タイムレス」/グッチ
ダイヤルとストラップに施されたGGロゴのホログラムが特徴的な「G-タイムレス」。SSケース、38㎜径、クオーツ。11万2000円/グッチ(グッチ ジャパン クライアントサービス 0120-99-2177)

 

安藤 「バーゼル・ワールド」(毎年スイスで行われる腕時計の世界的な見本市)で最初にあれを目にしたとき、これはヤバイなと(笑)。写真じゃわかりにくいけど、腕元が異空間に変わるというか、とにかく「何これ?」感が半端なかった。これは絶対、スーツに合わせたらウケるだろうなと……(笑)。

広田 ウケ狙い?

安藤 いやいや、楽しいじゃないですか。実際、ホログラムはかなり売れたみたいです。僕がグッチの時計を推してる理由は非常に明白で、時計でも「ちゃんとファッションしてる」からなんですよね。70年代から90年代くらいまでって、ファッションウォッチが面白かったんですよ、好き勝手にデザインしてて。でも、近年のラグジュアリーブランドの時計って、本格高級志向のものばかりな気がするんです。もちろん、それはそれで素晴らしいことなんだけど、全部が全部、同じ方向性じゃつまらないじゃないですか。

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時計関係者も評価する“ぶっ飛んだ”デザイン

広田 ラグジュアリーブランドの本格志向は確実に高まってますね。一方で、ファッションブランドという括りで言うと、“普通”な時計を出しているところもある。ブランドの世界観を押し出すことなく、言ってみれば「ライセンスで作ってるんじゃないかな?」みたいな。そんななかで、確かにグッチに関しては、アレッサンドロ・ミケーレがデザインしたなって感じさせる、相当ぶっ飛んだのが出てます。「この時計使えるの、今年いっぱいかな」というものも含めて(笑)。

安藤 いいんです、それで。今を最大限に楽しむのが本来のファッションウォッチなんじゃないかなと思うんです。腕に着けて出かけたら「とにかく気分が上がる」っていうのが大事。だけどそれって、簡単そうで実はかなり難しい。次から次と新しい楽しみを発明していかなくちゃいけないわけだから。

広田雅将●1974年、大阪府生まれ。腕時計専門誌「クロノス」編集長。腕時計ブランドや専門店で講演会なども行う業界のご意見番である。その知識の豊富さから、付いたあだ名は「ハカセ」。

広田 その意味で、グッチの時計作りって、ジュエリーと同じ感覚なのかもしれないですね。

安藤 まさにその通りかも。貴金属を使うわけでもなく、すごい機械を載せているわけでもなく、単純に今という瞬間を楽しみたい人のためのもの。別に資産価値があることが必要条件じゃない。

広田 ない、ない。

安藤 そしてそんな刹那的な存在であることは、むしろ贅沢な選択だと思うんです。シーズンごとに内容がガラリと変わるから、買うなら今しかない。90年代のスウォッチとか、それが楽しかった。スウォッチほど安くはないけど、その分、しっかりと高級感のある作り込みはされているし。

広田 僕が編集長をしている時計専門誌でも、グッチはずっと定点観測してるんです。時計ブランドに関していうと、ひと昔前まではファッションのトレンドと腕時計のトレンドって、必ずしも一致してなかった。でもグッチにはそのズレがないというか。だからなのか、グッチの時計を評価する時計関係者、すごく多いですね。

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スケーターが指名買いする“挑戦的な時計”

安藤 変に“置きに行かない”ところが、なんとも良いんです。今年の「グリップ」もそう。

ラグジュアリーブランドのスゴい時計【4】グッチ「グリップ」

スケートボードの世界からインスピレーションを得た「グリップ」/グッチ
スケートボードの世界からインスピレーションを得た「グリップ」。リリースが決まったときにはオーシャンズでも大きく取り上げた。SS(イエローゴールドPVD加工)ケース、35mm径、クオーツ。20万円/グッチ(グッチ ジャパン クライアントサービス 0120-99-2177)

広田 あれを見た瞬間、安藤さんの顔がすぐに思い浮かびました。好きだろうな、と。

安藤 もう手に入れました(笑)。色はゴールドで、ケースにもブレスにもこれでもかって「インターロッキングG」が入ってるやつ。

ブレスにはたくさんの「インターロッキングG」が。

広田 グリップは、中身はよくあるクオーツムーブメントなんですけど、それでこんな重いディスクを回転させるなんて、時計専業メーカーだったら絶対にやんないですよね(笑)。

安藤 視認性も全然良くない(笑)。でもそんなのグッチには関係ない。時間を知りたけりゃ、スマホで確認すればいいじゃん、みたいな。ロックな気分というか、してると自分が強くなった気分になる(笑)。

広田 ひとつの方向性として、超アリ。

安藤さんの私物。しっかり馴染んでいる。

安藤 世界の潮流は「ラグジュアリーストリート」ですから、この時計はまさにドンピシャじゃないかと。もちろんオフタイムでの活躍は間違いないです。この前、六本木ヒルズのグッチのスタッフと話してたら、この時計に限っては指名買いらしいんですよね。スケボーを脇に抱えて買いに来る人もいるとか。僕は、あえてビジネスでしたいです。カチッとしたスーツに合わせても「ハズし」としてカッコいいし、見た人は絶対に気になるから会話の糸口にもなる。挑戦的な時計をしている自分に酔えるし(笑)。

広田 グッチにしか作れない時計ですよね。

安藤 だと思います。来年にはグリップの新作のスペシャルモデルが発売される予定ですが、これがまた良い。真面目な話、買いたいんですよねー。でも、たぶん瞬殺だと思います。グッチの商品ラインナップにあって、時計はかなりリーズナブルなんですよ。洋服なんかよりも買いやすい。だからグッチの入門編としても、買いやすいジャンルだと思います。

 

※本文中における素材の略称:SS=ステンレスステール

[問い合わせ]
グッチ ジャパン クライアントサービス
0120-99-2177

関 竜太=写真 いなもあきこ=文

 

# グッチ# グリップ# 時計
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