誰だって「アイツには表と裏がある」なんて言われたくないだろう。表と裏には、本音と建前を使い分けたり、状況や相手によってうまく立ち回るようなネガティブなイメージがある。
しかし両者は本来、対概念を意味し、表は裏を隠すのではなく、裏の予感となり、一方で裏は表を演出するものでもある。
ひとつに拘泥するのではなく、多面性を持つ男は魅力的だ。今回テーマとしたのは、そんな腕に似合う裏表という概念がない時計。身に着ければ名刺代わりとなるはずだ。
FRANCK MULLER
フランク ミュラー/ラウンド スプリットセコンド ダブルフェイス クロノグラフ
裏表で多機能を搭載したフランクの源流ブランド設立前のフランク・ミュラーが1992年に手掛けた時計を忠実に再製作。時分を指すインダイヤルを6時位置に配すという当時でも奇抜だったレイアウトを受け継ぎ、ラップタイムを計測できるスプリットセコンドクロノグラフを備える。文字盤の中心にセットされた針と左右のカウンターでそれを示し、裏面にはタキメーター、テレメーター、パルスメーターの3種類の計測機能を搭載。
表のクロノグラフ針をスタートさせると、同軸上の裏の針も動くという仕組みだ。天才時計師と謳われるフランク・ミュラーの類いまれな発想力と技術力がここに凝縮されている。
SINN
ジン/206.ARKTIS.II
ローターに刻むのは独自技術に対する自信と誇り正式なブランド名は“ジン特殊時計会社”であり、そのプロダクトには質実剛健と評されるドイツのモノ作りの美学が宿る。このクロノグラフは北極海の潜水時でも身に着けられる時計として開発され、特殊オイルの採用で-45℃から+80℃の気温、水温での動作を保証する。ケースバックから覗くローターに記された雪の結晶マークと-45℃の刻印が実力の証しだ。
MORITZ GROSSMANN
モリッツ・グロスマン/アトゥム・バックページ
機械式の醍醐味を表に配置した意欲作ドイツ時計の伝統を受け継ぐブランドの真価は、自社製ムーブメントに表れる。スケルトンダイヤルを採用した本作は、手巻きムーブメントのレイアウトを反転。輪列やテンプ、手彫り装飾を施したテンプ受けなどを文字盤側に配すことで、機械式のハイライトを腕から外すことなく味わえる。
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