20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.46
2021.07.02
LIFE STYLE

「今はVUCAで変化の激しい時代だから」と言う上司は20代から疎まれる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

もともとVUCAとは軍事用語

VUCAとは、そもそもは軍事用語として誕生した言葉で、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を並べたものです。

冷戦以前の時代の戦争は、国同士が、参謀本部の作った作戦を現場の部隊が実行するというわかりやすいものでした。

しかし2001年9月11日アメリカ同時多発テロ事件以降、敵が誰かも、トップが誰かも、何が勝ち負けかもわからない戦争を行わねばならなくなりました。そういう状態をVUCAと呼ぶようになったそうです。

それが、’10年ごろより、「VUCA時代」のようにビジネスでも用いられるようになったわけです。

 

いつだって「変化の激しい時代」

10年前ぐらいにビジネス界にあったことと言えば、’08年9月15日にリーマンブラザーズが経営破綻したことで起こったいわゆる「リーマンショック」が最も大きなことでしょうか。

しかし、その前にも1990年から数年間で株価が大暴落した「バブル崩壊」や、’00年末からの「ITバブル崩壊」などもありました。

また、もっと古い時代を見れば、’60年代の日本は、経済成長率が年平均10%を越え、諸外国にも例を見ない急速な経済成長を遂げたり、その前は戦争で焼け野原になっていたりと、振り返れば、「なんだ、いつだって変化の激しい時代だったじゃないか」とも思えます。

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なんなら今は「停滞の時代」

逆に、これまでの時代と比較すると、もしかすると今は「停滞の時代」つまり「変化していない時代」と言えるかもしれません。

日経平均は1万円から2万5千円ぐらいを行ったり来たりしているだけですし(NYダウは100年以上右肩上がり)、国税庁の民間給与実態調査による日本人の平均給与も10年前とほぼ同じです。

GDP(名目)でも、10年間、500兆円超をうろうろしておりほとんど変わりません(中国は10年で倍)。インフレ率などもずっと0%前後で、物価は’95年からほぼ変わっていません。

けしてお金だけを基準にする話ではありませんが、「どこが変化の激しい時代」なのだと思う人もいるでしょう。

 

上司の世代が「停滞」を招いたという気持ち

確かに世界を見ればVUCAとも言える状況です。しかし、こと日本に限ってみれば、上述のように変化は緩やかでしょう。

欧米や中国で起きていることと比べると、日本は「失われた数十年」と言われるように、むしろ変わっていません。

それなのに「今はVUCAだ」「変化の激しい時代だ」とか、もし我々中高年の上司世代が口にすれば、若手は「どの口が言っているのか」と思うのではないでしょうか。

「あなた方の世代がこの停滞を招いたのではないですか?」と言い返したくもなります(私はもちろん言い返されるほうの世代ですが)。

 

言葉の由来に戻るなら、「現場起点」に

また、元々軍事用語であったVUCAに適した方法として、アメリカの軍事研究家ジョン・ボイドに考案された行動サイクルがOODA(Observe〈観察〉、Orient〈状況判断、方向づけ〉、Decide〈意思決定〉、Act〈行動〉)です。

以前、こんな記事を書いていたのにすみません。正式な詳細説明は別の方にお任せしますが、私の理解では要は「現場起点で判断し臨機応変に素早くどんどん動け」ということです。

つまり、上司がVUCAを言うなら、同時に「メンバーの皆さんは現場でどんどん自分の頭で考えて動いてください」とでも言わなくてはなりません。

俺の指示通りに動け、そして報連相を欠かさずしろ(PDCA的)、ではダメということです。

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「責任は俺が取る」の一言が足りない

さらに、そのように現場に権限移譲して自由に動いてもらいたいのであれば、言わなければならない言葉があります。それが「責任は俺が取る」です。

かの大宰相田中角栄が大蔵大臣(現在の財務大臣)に就任した際に、官僚たちに言ったという言葉もこれです。

彼は「君たちは天下の秀才、思うことがあれば何でも言いに来い。できることはやる。できないことはやらない。しかし、すべての責任はこの田中角栄が背負う。以上!」(筆者要約)と言われた当時の大蔵官僚たちは心酔したそうです。

この「責任は俺が取る」がなければ、いくら自由にさせて権限移譲したつもりでも、メンバーは「責任放棄」と捉えるだけです。

 

今の日本はむしろ「俺の言うことを聞け」が必要では

さて、ここからは素人の私見ですが、私は今の日本はそもそもVUCAというより、落ちるところまで落ちてしまっているために、そこからやるべきことははっきりしている時代ではないかと思っています。

VUCAとは以前の日本のように世界のトップに近づいてしまい、何をすべきかわからないときに言うことでしょう。負けている国や会社だらけ、言い換えれば見本となる国や会社だらけということです。

やるべきことはわかっているのです。ですから、VUCAとか聞いてしまうと「どこがやねん」とどうしても思ってしまいます。

今の日本に必要なのは、むしろNikeのスローガンで有名な“Just Do It.”ではないでしょうか。

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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 
石井あかね=イラスト

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