20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.38
2021.03.12
LIFE STYLE

経営層人事の噂話をしたがる上司は20代から煙たがられる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

期末は人事異動の季節

3月や9月は多くの会社の半期末になっており、4月や10月の人事異動や昇進・昇格などが発表される季節でもあります。サラリーマンたるもの偉くなってナンボ、という考えがまだまだ残っていた我々のような世代にとっては、なんとなくそわそわする時期です。

自分自身の異動はもちろんのこと、次の社長はどうなるのかとか、どこの事業部のトップは誰になりそうだとか、自分の仕事の方向性に大きな影響を与えるポジションでなくとも、興味の対象として、ここかしこで噂話に登るものです。

特に中間管理職層は、経営幹部人事によって自分も影響を受けることもあり、より興味を持つことでしょう。

 

できる人はコントロールできないものには興味を持たない

しかし、組織で働く人にとって、自分よりも上位層の経営幹部の人事などは、コントロールできないものです。社会は民主主義ですが、会社は残念ながら民主主義ではありません。

こんなとき私は、昔プロ野球選手のイチローさんや松井さんが「自分にコントロールできないものにいくら関心を持っても仕方がない。自分がコントロールできることに集中する」と言っていたことを思い出します。

高業績を上げる人は、気にしてもどうしようもないことに精神的・身体的リソースを無駄に使わない。人の認知資源には限界があるわけですから、成果を上げることだけに集中すべきということです。

 

雑音をシャットアウトするから仕事に没頭できる

また、心理学者チクセントミハイの「フロー体験」理論というものがあります。

「フロー体験」とは、認知資源が100%今取り組んでいる対象へ注がれている没頭状態のことです。この「フロー体験」状態になると、ものすごい集中力と楽しい気持ちが生じ、結果、業績も上がるというわけです。

この状態になるためにはいくつか条件があるのですが、そこに「対象への自己統制感(つまり、コントロールできる感覚)」と「集中を妨げる雑音のシャットアウト」があります。

経営幹部人事の噂話などはコントロールもできない「雑音」ですから、そんなことに気を取られていては仕事に差し障るというわけです。

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上の人事の噂話より、若手をサポートしてほしい

さて、そんな上司や先輩である中高年世代を、若者はどう見るでしょうか。「どうせ影響力もないのだから、結果が出るまで静かに仕事に集中してほしい」と思うのではないでしょうか。

もちろん、誰が次のトップ、リーダーになるかは、事業の方針に影響を与えるわけですので、中間管理職層が興味を持つことは当然ではあります。しかし、それは結果が出てから速やかに情報を入手し、粛々と対応すればいいことであり、それまでは今の仕事に集中しておけばいいのです。

中間管理職の日常の仕事は任せられたミッションをチームとともに達成することですが、そのために若手をサポートすることに尽力すべきなのです。

 

そもそも若者は経営幹部の人事など興味がない

さらに言えば、経営幹部の人事という遠い天上の世界での出来事などには興味がないのです。それを休憩時間や飲み会の場など、隙間時間に上司に話題として持ち出されても、心ここにあらずとなるのは当然です。

さまざまな調査を見ていると、若者の仕事におけるモチベーションリソース(やる気の源)は、我々中高年世代のような出世欲やお金などの物質的なものよりも、「成長できるか」や「社会に貢献できるか」「知的好奇心が満たされるか」というようなものに変わってきていることがわかります。

彼らにとっては、経営幹部の人事の噂話はまさに雑音であり、できる限りそんなことに気を使いたくないものでしょう。

 

事が起こってからは説明責任に集中すべき

ですから、中間管理職層であることが多い我々中高年層は、ことが起こる前の「噂話」に気を取られてはいけません。しかし、一方で、一度ことが起これば話は変わります。先にも述べたように経営幹部人事は会社の方向性を決める大事なことです。

そのため、中間管理職層は今回の経営層の人事の「意味」がどのようなものであるかについて、若手や後輩たちに説明してあげる責任はあるでしょう。「この人がこのポジションについたからには、おそらく事業戦略にはこういう変化がある」というようなことです。

ことが起こったあとは、管理職はそのネットワークを使って意味を知るべきであり、無関心でいてはいけません。

 

うまく説明できなければ、力不足がばれる

もし、経営層人事について、若者でも納得できるような合理的な説明ができなければ、そのあとのマネジメントや指導にマイナスの影響が出るでしょう。

「この人は、会社の経営方針のコアな情報にアクセスできない人なのだ」「情報を手に入れるための人的ネットワークがない人なのだ」と思われ、上司や先輩として力不足な人、頼りない人だと思われてしまうかもしれません。

フォロワーとしては強いリーダー、能力のあるリーダーについていきたいと思うものです。繰り返しになりますが、事前の無責任な噂話と、事後の説明責任とはまったく異なるものです。前者はできるだけ避け、後者に力を注いでいきましょう。

 

連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 

石井あかね=イラスト

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