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上の人事の噂話より、若手をサポートしてほしい

さて、そんな上司や先輩である中高年世代を、若者はどう見るでしょうか。「どうせ影響力もないのだから、結果が出るまで静かに仕事に集中してほしい」と思うのではないでしょうか。
もちろん、誰が次のトップ、リーダーになるかは、事業の方針に影響を与えるわけですので、中間管理職層が興味を持つことは当然ではあります。しかし、それは結果が出てから速やかに情報を入手し、粛々と対応すればいいことであり、それまでは今の仕事に集中しておけばいいのです。
中間管理職の日常の仕事は任せられたミッションをチームとともに達成することですが、そのために若手をサポートすることに尽力すべきなのです。
 

そもそも若者は経営幹部の人事など興味がない

さらに言えば、経営幹部の人事という遠い天上の世界での出来事などには興味がないのです。それを休憩時間や飲み会の場など、隙間時間に上司に話題として持ち出されても、心ここにあらずとなるのは当然です。
さまざまな調査を見ていると、若者の仕事におけるモチベーションリソース(やる気の源)は、我々中高年世代のような出世欲やお金などの物質的なものよりも、「成長できるか」や「社会に貢献できるか」「知的好奇心が満たされるか」というようなものに変わってきていることがわかります。
彼らにとっては、経営幹部の人事の噂話はまさに雑音であり、できる限りそんなことに気を使いたくないものでしょう。
 

事が起こってからは説明責任に集中すべき

ですから、中間管理職層であることが多い我々中高年層は、ことが起こる前の「噂話」に気を取られてはいけません。しかし、一方で、一度ことが起これば話は変わります。先にも述べたように経営幹部人事は会社の方向性を決める大事なことです。
そのため、中間管理職層は今回の経営層の人事の「意味」がどのようなものであるかについて、若手や後輩たちに説明してあげる責任はあるでしょう。「この人がこのポジションについたからには、おそらく事業戦略にはこういう変化がある」というようなことです。
ことが起こったあとは、管理職はそのネットワークを使って意味を知るべきであり、無関心でいてはいけません。
 

うまく説明できなければ、力不足がばれる

もし、経営層人事について、若者でも納得できるような合理的な説明ができなければ、そのあとのマネジメントや指導にマイナスの影響が出るでしょう。
「この人は、会社の経営方針のコアな情報にアクセスできない人なのだ」「情報を手に入れるための人的ネットワークがない人なのだ」と思われ、上司や先輩として力不足な人、頼りない人だと思われてしまうかもしれません。
フォロワーとしては強いリーダー、能力のあるリーダーについていきたいと思うものです。繰り返しになりますが、事前の無責任な噂話と、事後の説明責任とはまったく異なるものです。前者はできるだけ避け、後者に力を注いでいきましょう。
 
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
 
石井あかね=イラスト


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