20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.27
2020.09.25
LIFE STYLE

「ダイバシティが組織には重要だ」が口癖の上司は20代から訝しがられる

「ダイバシティが組織には重要だ」が口癖の上司は20代から訝しがられる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

役に立つから重要なのではない

世界にはさまざまな民族や人種があり、男女やLGBTなどのジェンダーがあり、多種多様な考え方があります。こういった世界の多様性のことを「ダイバシティ」と呼んで、尊重するべきものという考え方が定着して久しいですし、私も大賛成です。

しかし、近年企業において言われるダイバシティの扱われ方については、やや違和感を持つところもあります。それは、「ダイバシティは創造性や変化対応能力を上げるためには、組織にとって重要なのだ」という言説です。

ダイバシティは組織にとって良い効果があるから、役に立つから重要なのではなく、それが世界の現実だから受け止めるべきなのではないでしょうか。

 

もし、創造性に貢献しなかったら

そんな潔癖な話をせずとも、結果的にダイバシティが進めば、いろいろな人にすみやすい世の中になるのではないかという意見もあるでしょう。しかし、私はダイバシティの重要性を「良いことがあるからだ」と言い過ぎるのは逆効果の場合もあるのではないかと思います。

実際、行動科学などの領域で、ダイバシティの度合いの高低と、組織の創造性や生産性などの関係について研究がなされていますが、その結果は一貫性がなく、必ずしもダイバシティの高さが創造性を生むとは言えないようです。例えば、チームワークが重視される仕事では、ダイバシティが低い、つまり同質性が強い方が効率的であるというようなことです。

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ダイバシティが高いと、ふつうは「しんどい」

さらに言えば、今の世の中ではこういうことを述べることだけでも憚られたりしますが、ダイバシティが高いこと自体は、ふつうの人にとっては、実は「しんどい」ことです。多くの人は同質性を求めます。心理学でも「類似性効果」と言って、自分と似ている人に好意を持つ傾向があることが知られています。

異質で、価値観の違う人が隣にいることはコミュニケーションコストがかかるからです。意見の対立をすり合わせたり、自分の利益を捨てて譲歩したり、さまざまな調整が必要だからです。

そういった「しんどい」ことを推進するには、動機づけが必要なわけですが、それが「役に立つから」でよいのでしょうか。

 

嫌でも大変でも推進すべきなのが「ダイバシティ」

ダイバシティを推進する根拠を「役に立つ」とするならば、皆はその結果を求めることになるでしょう。

管理職の女性比率を上げるのはその方が「役に立つから」「新しいことを生むから」「創造性が上がるから」と言われて登用された女性管理職は強いプレッシャーを受けることになります。それでつぶれてしまったり、成果を出せなかったりすれば、人はダイバシティを推進することに疑いを持つことになるでしょう。

そうではなく、冒頭で述べたように、ダイバシティを高めることは「それが世界の現実だから」大切なのです。少数派の存在を認める、異質さを認めること自体が素晴らしいことなのです。

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期待しないほうがダイバシティは効果が出る

聖人君子みたいなことを言いたいわけではありません。そのほうが結果として、逆説的ですが、効果が出ると思うのです。

男女は世界に半々だから、いろいろな場で男女が半々であるのは「ふつう」。男性だけ、女性だけと偏りがあるのは、何らかの理由がある場合以外は「おかしい」。それぐらいの期待感でダイバシティを推進するほうが、過大な期待感を背負わされることなく、異質な人や少数派やこれまで差別的な扱いを受けてきた人が伸び伸びと活躍できる土壌ができるのではないでしょうか。

ダイバシティはそれ自体が大切だからコストもかかるが推進するとしたほうが、人々の支援行動も自然に生まれることでしょう。

 

ダイバシティに効果を求めるならやめてしまったほうがよい

私はダイバシティを推進することは最終的には良い効果を組織にもたらすと思います。しかし、その効果をすぐに求めなければならないほどの余裕のない会社ならば、ダイバシティ推進などやめてしまって、「うちはこういう会社だ」と強く文化のアイデンティティを打ち出して、ある意味「排他的」な会社になったほうがよいと思います。そのほうがマネジメントやコミュニケーションのコストは減り、事業推進力は向上するかもしれません。

それで売上を出し、利益を上げて、税金を払うことで社会貢献すればいいのです。そうして、そのうち十分成長して余裕ができたら、ようやく多様な世界という現実を受け入れる場としての責任も果たすようになればよいのではないでしょうか。

 

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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# ダイバシティ
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