“職遊融合”時代のリアルライフ Vol.12
2020.09.17
LIFE STYLE

「自分らしく生きるために」ワーケーションを推奨する地方自治体の幹部

「“職遊融合”時代のリアルライフ」とは……

「定住こそが最大の制約かもしれない」をモットーに、日本各地にワーケーションサービスを展開する「リビングエニウェアコモンズ(LAC)」。

そのサービスを活用し、さまざまな職種の人たちのリビングエニウェアな暮らしを覗く本企画、今回はなんと、地方自治体の幹部さんの登場だ。

神奈川県議会議員・福島県磐梯町CDO
菅原直敏さん(42歳)
1978年、神奈川県生まれ。地方自治、ソーシャルワーク、デジタルトランスフォーメーションを専門に、官民、営利非営利、労使、さまざまな立場から共生社会を目指す“複業型人物”。

 

定住がもたらす、不自由さ

地域に奉仕する神奈川県議会議員でありながら、福島県磐梯町のチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)として、行政サービスのデジタル化推進に取り組む。

地元に奉仕することが生業の神奈川県議会議員でありながら、福島県磐梯町のチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)として、行政サービスのデジタル化推進に取り組む。

自治体レベルだけれど、議会と行政の職務に同時に就いている人はいないはず。そう言う菅原直敏さんは、続けて自身を“旅人”と称した。

「自称ですけどね(笑)。大学時代に1年休学して地球を一周したことが今でも強く影響しているんです」。

アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカと周り帰国。当時は今ほどネット環境が整備されておらず、情報の取得が簡単ではなかった。ポータブルのWi-FiどころかGoogleによる経路案内もなく、あらゆる決断には“行ってみて初めてわかる”的なリスクが伴った。

1999年に、菅原さんが地球一周でオーストラリアを旅していたときのひとコマ。

しかし、そのリスクを取って歩んでいくのが旅。パッケージ化された旅行にはない、自分の意思によってもたらされる“自由”を菅原さんは謳歌した。

そして、そうした自由は、テクノロジーを駆使すれば決裁権を持たない会社員でも享受できる。つまり、誰もが“もっと自分らしく生きられる”と菅原さんは言う。

「コロナで大きく変わったのは気持ちです。毎日会社に行かなくても仕事はできるし、それだけのテクノロジーはすでにある。そのことに多くの人が気付いたと思いますし、仕事や生活のあり方について、決裁権を持つ年配の多くの人も、コロナ以前と異なる気持ちを持っているのではないでしょうか」。

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行政でも感じる、働き方の変化

福島県・磐梯町のLAC会津磐梯では、グリーンを目の前に各々が思い思いに仕事に取り組む。

「議会や行政は紙文化なんです。決裁印が必要だったりしますし文書を紙で残す風土が今も根強い。でも磐梯町ではデジタル化の推進に力を入れていて、すでに職員の意識はかなり変わりました。

実際、神奈川から役場を訪れると『あれ、今日は何しにきたんですか?』なんて言われるんです。来なくてもリモートで仕事は十分にできるだろうといったニュアンスで。僕としてみれば、業務だけでなく、勤務後に飲んでコミュニケーションをはかりたかったりするんですけどね(笑)」。

磐梯町は福島県会津地方の中部に位置する人口3300人ほどの小さな町。

磐梯町は福島県会津地方の中部に位置する人口3300人ほどの小さな町。町役場の職員は70人ほどながらデジタル化を積極的に取り入れた先進的な取り組みを行っている。その拠点が「リビングエニウェアコモンズ(LAC)」の施設に構えたDX戦略室。

場所をLAC会津磐梯に決めたのは菅原さんである。

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LAC会津磐梯のお気に入り

LAC会津磐梯
LAC会津磐梯を取り囲むのは、このロケーションである。

菅原さんにとっては仕事の拠点でもあるLAC会津磐梯。改めてその魅力を聞くと、少しも仕事に支障をきたさないデジタル環境があることに加え、都会にはない豊かな自然と、楽しいコミュニティの存在を挙げてくれた。

 

・豊かな自然

施設の前にはサッカーコート2面分の大きな芝生のグラウンドがあり、スポーツはもちろん、椅子を出せば青空ワークスペースができあがる。

「それにLAC会津磐梯は磐梯山の麓にあり、猪苗代湖も近い。ハイキングやゴルフ、湖の散策、冬になればスキーやスノーボードといったウインタースポーツが楽しめます」。
煮詰まったら思う存分、体を動かす。

「それにLAC会津磐梯は磐梯山の麓にあり、猪苗代湖も近い。ハイキングやゴルフ、湖の散策、冬になればスキーやスノーボードといったウインタースポーツが楽しめます」。

仕事の前後、もしくは合間にアクティビティを取り入れた滞在がLAC会津磐梯では期待できるのだ。

 

・コミュニティがもたらすプライスレスな価値

「とはいえ、自然やアウトドアアクティビティが楽しめることは地方に行けば普通のこと。ここの特徴は、コミュニティがあることです」と菅原さん。

さまざまな技能を持った人たちが集まるコミュニティとしても機能している。

広々としたテラスでの朝ヨガをはじめとする朝活シリーズや、農家さんによる野菜販売といったイベントを企画して、いろんな人との交流をはかる。さらに滞在時にはLAC会津磐梯のコミュニティマネージャーがほかの滞在者との交流をアレンジ。

LAC会津磐梯でコミュニティマネージャーを務める蛯名有里さん(左)と、開放感あるテラスで打ち合わせ。

出会い・交流・共創の機会を演じてくれるという。それによる「思いがけない出会い」は、プライスレスな魅力だ。

 

・旅を感じるゲストルーム

LAC会津磐梯の利用者が宿泊するゲストルームは、畳敷きがほっこり和む和室のドミトリー。

LAC会津磐梯の利用者が宿泊するゲストルームは、畳敷きがほっこり和む和室のドミトリー。
LAC会津磐梯のゲストルーム。

8畳タイプと8畳二間タイプがあり、菅原さんは「大学時代の旅を思い出させてくれます」と笑う。ドミトリーだから当然、滞在者同士の交流の場にもなっている。

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どこにいてもOKな時代へ

LACを運営する株式会社ライフルの井上高志社長は「テクノロジーで人々を定住から解放しよう」と掲げ、菅原さんはその世界観に共感したという。

オンラインで取材を行った際、菅原さんは名峰・磐梯山の写真を背景に使っていた。

そのため菅原さんが「テクノロジーを活用して自分らしく生きられる社会作り」を目指す一般社団法人パブリテックを立ち上げる際には、知人を介して井上社長に連絡をし、初めて会う場で理事職をお願いした。

そうした経緯から菅原さんは磐梯町と関わりを持つようになった。そして目下、早期に実現したいのは町役場の職員のリモートワーク化だという。

「7月に磐梯町と東京・渋谷にある2つの民間企業との間で包括連携協定が締結されました。そのため渋谷にある企業のオフィスは交流の場となり、さらにリモートワーク化が進めば渋谷で磐梯町の仕事をすることができる。

毎日役場に行く必要がなくなるので、都内に居住すれば空いた時間に都内の学校に通うなどしてスキルアップがはかれ、業務にフィードバックもできます。テクノロジーを活用し意識を変えれば、決裁権を持たない小さな町の公務員でも、自分らしい働き方や生き方を実現できるんです」。

デジタルの恩恵を受け、今後はさらに「どこにいてもOK」な社会になっていくと菅原さんは言う。

そのとき、誰もが旅人のように生きられる時代の象徴として、時代に先駆けた町の頭脳があるLAC会津磐梯は、多くの人に利用され、ごく当たり前の存在になっているのかもしれない。

 

「リビングエニウェアコモンズ(LAC)」
あらゆる制約に縛られることなく、好きな場所で、やりたいことをして暮らす生き方を実践するための“コミュニティ”。現在、会津磐梯、伊豆下田、岩手県の遠野など日本全国5カ所に展開する(詳しくはHPを参照)。いずれもWi-Fi環境や電源などを完備したワークスペースと、長期滞在を可能にしたレジデンススペースからなる複合施設だ。2020年中には計10カ所のオープンを目指している。
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「“職遊融合”時代のリアルライフ」とは……
モーレツ社員が礼讃された高度成長期から、ライフワークバランスが重視される2000年代へ。そして今、ワーク(職)とライフ(遊)はより密接となり、「そもそも区別しない」生活が始まった。ワーケーションなどのサービスも充実し、職場の常識も変わり、身の回りに新しい暮らしを実践する仲間も増えてきた。さて、あなたはどう生きる?
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小山内 隆=取材・文

# ワーケーション# 県議会議員# 福島県磐梯町
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