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2020.06.10

ライフ

フェンシングの五輪メダリストが「Uber Eats」の配達員になった理由

「僕がバイトを始めたことに、なんでみんながそこまで驚くのかよくわからないんですよね」。
2012年ロンドン五輪、フェンシング男子フルーレ団体で銀メダルを獲得した剣士、三宅 諒(29歳)は飄々と答える。
東京五輪出場を目指す三宅は今年5月、スポンサー契約を自らの意思で終了させ、フードデリバリーサービス「Uber Eats」の配達員を始めた。日本の現役フェンシング選手としては唯一、メダル獲得経験を持つレジェンドが、一体なぜ──その決意に迫った。
Uber Eatsの配達員として働くロンドン五輪銀メダリスト、三宅 諒。©️コモンズ2

五輪目前、通過点として選んだUber Eats生活

世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症の影響で、TOKYO 2020は延期が決定。出場選手の選考会も中断された。先の見通しが立たないなか、三宅はスポンサー支援を受け続けることに疑問を感じ始めたという。
「スポンサーとは1年ごとの契約をしていましたが、“これからどうなるかわかりませんが、支援をよろしくお願いします”と言うのが、自分自身のなかで苦しくなってしまったんです」。
五輪に出場するクラスのアストリートは、企業に所属して活動する選手が多い。しかし三宅は、「今の自分なら東京五輪を目指せる」と自らを売り込み、スポンサーを見つけてプロアスリートとして活動していた。スポンサーの支援がなくなれば、当然、収入もなくなる。
ときに自身のツイッターで遠征費の自己負担額を嘆くこともあった三宅。メダリストといえども競技を続けるには多額の資金が必要だという厳しい現実が窺える。
「正直、スポンサーがいても遠征が重なるとお金がかかります。そのうえで収入がゼロになるのは不安しかない。でも、試合もできず、物理的に結果が出せないのにお金をもらい続けるというプレッシャーには耐えきれませんでした。それでもフェンシングが大好きで、五輪を目指したい気持ちは本物です。自力で遠征に行ったり、練習や試合の再開を目指したい。そのための第一歩がUber Eatsだったんです」。


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