それは禁断の着心地……愛さずにはいられない「楽な服」! Vol.49
2020.04.15
LIFE STYLE

俳優から焙煎士へ。オーシャンズな男・坂口憲二さんの理想の働き方

俳優から焙煎士というキャリアを歩み出した坂口憲二さん。趣味のサーフィンとコーヒービジネスを結びつけ、今も輝き続けている。

それは、きっと自分に合った“働き方”に出会えたからであろう。

 

今があるのは、海とサーフィンのおかげ。次はコーヒーで恩返しを!

坂口憲二 2019年には「ザ・ライジングサン・コーヒー」を立ち上げ、代表兼ロースターとなる。
坂口憲二 1975年生まれ、東京都出身。1999年のデビュー以来、俳優として活躍。2018年に病気の治療に専念するため芸能活動の無期限休止を発表。その後、西海岸で出会ったコーヒー文化の魅力に目覚め焙煎士のキャリアを開始。2019年には「ザ・ライジングサン・コーヒー」を立ち上げ、代表兼ロースターとなる。

いつも行くというサーフスポットからクルマでわずか。特発性大腿骨頭壊死症という大病をきっかけに芸能活動を休止し、現在ロースターとしてのキャリアを歩んでいる坂口憲二さんの焙煎所は、敷地内にパームツリーが植わる南国のような雰囲気の中にあった。

天井が高い建物は海外のウェアハウスのようで、広々と開放感あるスペースに焙煎機が置かれている。その前に坂口さんは静かに座り、時折香りと色みを確認しながら、コーヒー豆が煎られていく様子を眺めていた。

「うちの豆は、しっかり火を入れた深煎りが多く、昔ながらの喫茶店で飲まれているようなやつですね。ステーキで例えるならウェルダン。じっくりと焼くことで余計な脂が削ぎ落とされ肉の旨味を堪能できるように、深煎りは口の中に嫌な酸味が残らずガブガブ飲めるんですよ」。

坂口さん自身、以前からコーヒーはよく飲んできた。それこそ撮影の待ち時間や移動の際など毎日のように口にしていた。しかし「旨い」と思いながら飲んでいた記憶はあまりないという。日々のルーティーンとして、無意識のうちに手にしていた感じに近いのだろう。

意識が芽生えたのは、かつて奥さんが住んでいた米国ポートランドを数年前に訪ねたとき。街には多くのコーヒーショップがあり、そのいずれもが独自の味わいを提供していた。

コーヒーの面白さを意識した、初めての瞬間だった。

「コーヒーのなかでも『ブレンド』は、異なる豆の掛け合わせだからお店ごとに味が違い、そこには無限の可能性があるんです。僕はサーフィン後に脱力しながら飲むひとときを、より優雅なものにしたかった。海上がりは口の中が塩っぽいですから、求めたのはそれでも負けない味。そこでブラジルとケニアの豆を配合し、しっかりとローストすることでアフターサーフブレンドを生み出したんです」。

コクがあるけれど味わいはすっきり。そのため“ガブガブ”と飲める。まさに坂口さんが理想とする、彼のライフスタイルにフィットしたブレンドコーヒーなのである。

この坂口さんが手掛けるブランド「ザ・ライジング・サン・コーヒー」の顔となる味は、ロースターである自身とバリスタとの二人三脚で生まれたものだという。「僕の舌は味を決めるほど鋭くない。信頼するバリスタにイメージを話し、彼が豆を配合。それを僕がローストして出来上がるんです」と誕生背景を話してくれたが、そのバリスタこそが焙煎士になるための個人レッスンを坂口さんに施した人。コーヒーの抽出技術を競う全国大会で上位入賞の経験を持つ実力者で、今は会社の運営にも携わる。

そう、現在の坂口さんは経営者としての顔も持つのだ。

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今のほうが人間としてのバランスはいいですね

「仕事は多岐にわたります。例えば焙煎したコーヒーの卸先を開拓することも仕事。とはいえ単に数が増えればいいとは思っていません。『ザ・ライジング・サン・コーヒー』の味をしっかり再現してもらいたいので、ドリップの仕方なども伝えながら、ゆっくりと広げていきたいですね」。

最近では北海道・広尾町の「ベイ・ラウンジ・コーヒー」、伊豆の「アイリー・コーヒー・アンド・シー」に卸すことが決まった。どちらも海辺の町にあるショップで、オーナーがサーファーという、サーフィンつながりで生まれた関係だ。

「徐々に復調してきたので海に行く時間も増えました。今はパドルアウトをして海に浮かぶだけでありがたみを感じます。それにサーフィンをしていたから馴染み深い千葉・九十九里に焙煎所を設けることになったし、“海上がりに飲みたくなるコーヒー”も生まれました。僕にとって海やサーフィンは大きい存在。これからはビーチサイドの盛り上がりにひと役買ったり、コーヒーで恩返しできればいいなと思っています」。

まるで我が子のように、仲間と大切にブランドを育てている坂口さん。先だけを見つめる表情から曇りは感じられないが、改めて、人生から俳優のキャリアとサーフィンを失う可能性があった大病と向き合い手にしたものとは、何か?

「人間らしい生活ですかね。俳優として活躍できていた時代の生活は、ドラマを撮って、撮影がない日にはコマーシャルを入れて、たまに休みができたら海に行って自分を保つという極端なものでした。今は仕事と海にプラスして、子供と遊んだり、知人と酒を飲むといった時間がある。いろんな要素が生活にあるから視野も広がり、今のほうが人間としてのバランスはいいですね」。

仕事と家庭と趣味を同一線上で楽しんでいる。ごく自然と発せられたそうした言葉からは、経営者と焙煎士、父親、ひとりの男としての務めを、少しの気負いもなくこなす坂口さんの姿が浮かんだ。

ザ・ライジングサン・コーヒー
自家焙煎の豆の販売をメインに、挽きたてのコーヒーもテイクアウトできるが、「しばらくは地域密着スタイルで展開したい」と、あえて住所は非公開。オリジナルブレンド、「アフターサーフブレンド」200g 1200円などがあり、販売は、店舗とオンラインショップで展開中。
www.therisingsuncoffee.jp
instagram@therisingsuncoffee

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響にともない、都内の店舗は5月6日まで休業中。詳しくはSNSでご確認ください。

鈴木泰之=写真(静物・取材) 三浦安間、山本雄生=写真(取材) 小山内 隆=文

# ザ・ライジングサン・コーヒー# サーフィン# 坂口憲二
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